博徒列伝
空前の大殺陣!日本刀オールスターの圧巻

1968年 カラー シネマスコープ 98min 東映京都
企画 俊藤浩滋、橋本慶一、日下部五朗 監督 小沢茂弘 助監督 大西卓夫 脚本 笠原和夫
撮影 鈴木重平 音楽 渡辺岳夫 美術 井川徳道 録音 堀場一朗 照明 増田悦章 編集 堀池幸三
出演 鶴田浩二、大木実、北林早苗、藤純子、若山富三郎、高倉健、北島三郎、橘ますみ、天津敏
名和宏、北村英三、八名信夫、汐路章、河津清三郎、菅原文太、待田京介、玉川良一、平参平


 数多くの東映任侠映画を監督してきた小沢茂弘の代表作「博徒」「博奕打ち」シリーズに並ぶ人気シリーズとして打ち出された「列伝」シリーズ。本作はオールスターキャストの任侠映画として正月興行として当時人気を二分していた「新網走番外地」と同時公開されるも、オールナイト興行では出演者たちが登場する度に拍手が沸き起こり、盛り上がりを見せていた。それというのも、本作が公開された頃はすでに主要な出演者全員、単独の看板番組を持っており、各々主役級で観客を呼べる大スターたちばかりであったため実に贅沢な配役に観客が熱狂したというわけだ。脚本は小沢監督と何度も組んでいる笠原和雄が務め、複雑に絡み合う群像劇を巧みな構成でスッキリと見せている。主演の鶴田浩二も「博徒」シリーズから小沢監督と信頼関係を結んでいるだけに息のあった落ち着いた演技を披露してくれる。撮影もベテラン鈴木重平が手掛け、緊張感溢れるカットバックの多い賭博シーンを始め、わずか二十日前後の撮影日数で完成させてしまう職人業が光る一品。


 昭和初期。刑務所に服役していた大木戸一家の若松組組長若勇(鶴田浩二)の元に弟分である川田(大木実)が面会に訪れ、大木戸一家二代目の話しを持ちかける。しかし、三年間の懲役が残っている若勇は跡目を川田に譲り、出所後は川田の右腕となって手腕を発揮していた。しかし、若勇の縄張を狙う監獄一家の金光は、いやがらせを重ね、若勇と監獄一家は一触即発の事態に陥っていた。そこへ顔役でもある甲田(河津清三郎)の仲裁によって、若勇のしきる芝浦埠頭の下請けを金光が引き受ける事で和解する。しかし、金光の下心を密かに案じていた若勇の心配通り、人足たちの賃金をピンハネする監獄一家に人夫たちの不平不満はつのり、渡世人あがりの人足小桜(北島三郎)は監獄一家にたち向った小桜を若勇が救い出す。ある日、芸者勝弥(藤純子)に因縁をつけた富士家一家の子分から勝弥を助けたため留置されてしまった若勇だったが、警察から出てきた若勇を金光たちが待ち伏せし、子分を殺されてしまう。子分の敵討ちを川田に持ちかけるも、甲田との摩擦をきらう川田は若勇を破門してしまう。兄弟分の盃を交わした席上で川田は、その裏に隠された大木戸一家の縄張を狙う甲田の真意を知り、その場で杯を返上する。甲田は金光に命じ、川田を闇討ちにかけ殺害してしまう。一家を解散した若勇は、川田の弔い合戦のため子分たちを引き連れ、甲田と金光へ殴り込みをかけに赴くのだった。


 何と悪役がカッコいい映画だろうか。冒頭、服役中の鶴田浩二演じる若勇の元へ跡目の話しを持って来る大木実演じる川田との面会シーンの後、「それから三年後」のテロップが表示される。度肝を抜かれたのはここからだ。夜の通りを歩く東映が誇る悪役軍団…天津敏を筆頭に名和宏、北村英三、八名信夫、汐路章、江幡高志、国一太郎の七人がまるで「レザボアドッグス」よろしく(いやいや…こっちが本家のオリジナルで日本映画オタクのタランティーノが本作をパクったに違いない)横一列に歩いてくる。こんなに悪役俳優たちがワクワクさせてくれた登場シーンはかつて観た事がない。正直言ってこのシーンだけでも本作は名作である。しかも、各々の出立ちが実に個性的で「こいつら、これから何をしでかすんだろう?」と悪の活躍が待ち遠しくなってくる。さすが、東映で最多のプログラムピクチャーを手掛けた小沢監督だけに、あの手この手と見せ方にひと工夫している。
 しかし、凝った演出は悪役の登場だけではない。オールスターキャストである本作においては各々のシークエンスで登場する看板スターたちの登場シーンに見せ場を設けているのが大きな特長でもある。敵対する一家と杯を交わしたため鶴田浩二と反目する若山富三郎が、狭い座敷の一室で対峙していた処に現れた芸子の藤純子…その場の空気を察して、緊迫した状況を制してしまうところは「緋牡丹博徒」を彷彿とさせるカッコ良さがある。さらに後半3分の2を経過した頃に満を持して登場する高倉健に至っては、まさしく「待ってました!」の声を掛けたくなる程の貫禄がある。悪役には悪役の…すぐに殺されてしまうような脇役には脇役の見せ場というものが存在しており、小沢監督は、スターだけに留まらず、こうした脇役や悪役に至るまで細かなキャラクター設定をしているからこそ本作全てのキャラクターが引き立っているのである。当時、オールナイト興行を行っていた映画館の満席となっていた場内では出演者が初めて登場する度、掛け声がかかり拍手が沸き起こったというのは当然の出来事であろう。
 小沢監督は意識的に絵になるような場面を撮影監督である鈴木重平と共に作り上げており、こうした計算された構図がふんだんにあるのが本作の特長だ。何と言ってもタイトルとなっている賭博シーンは、さすがに素晴らしい迫力に溢れている。借金の片に女房が身を売ったため気質となって働こうとする北島三郎演じる人夫のため勝負を賭け、胴師となる鶴田と相手になる若山。ちなみに、ここで行われているのは「手本引き」というものだが、壷振りと違って緊迫感と緊張感がある勝負なのだ。そして、勝負の成り行きを横で見守る藤純子の三人の表情が交互にカット割をして見せる演出は、さすがとしか形容のしようがない。そして…クライマックスの殴り込みを掛けるシーン、鶴田と若山が刃を交わし合う男臭さで観客は絶頂に達するのだ。

若山富三郎が刃を交えた鶴田浩二につぶやく「お互い嫌な渡世だなぁ…」は任侠映画史上最高の名セリフである。


ビデオ、DVD共に廃盤後、未発売
昭和38年(1963)
人生劇場飛車角
人生劇場
・続飛車角

昭和39年(1964)
人生劇場
・新飛車角
日本侠客伝

昭和40年(1965)
網走番外地
昭和残侠伝
網走番外地
・北海篇
・望郷編
続・網走番外地
明治侠客伝
/三代目襲名

昭和41年(1966)
網走番外地
・南国の対決
・大雪原の対決
荒野の対決網走番外地
昭和残侠伝
・一匹狼
・唐獅子牡丹

昭和42年(1967)
網走番外地
・決闘零下30度
・悪への挑戦
・吹雪の斗争
昭和残侠伝
・血染の唐獅子
博奕打ち
・一匹竜
・不死身の勝負

昭和43年(1968)
緋牡丹博徒
・一宿一飯
人生劇場
・飛車角と吉良常

新網走番外地
博徒列伝
博奕打ち
・総長賭博
・殴り込み

昭和44年(1969)
新網走番外地
・流人岬の血斗
・さいはての流れ者
昭和残侠伝
・唐獅子仁義
・人斬り唐獅子
緋牡丹博徒
・花札勝負
・鉄火場列伝
・ 二代目襲名
博奕打ち
・必殺

昭和45年(1970)
新網走番外地
・吹雪のはぐれ狼
・大森林の決闘
昭和残侠伝
・死んで貰います
緋牡丹博徒
・お竜参上
博奕打ち
・流れ者

昭和46年(1971)
新網走番外地
・嵐呼ぶ知床岬
・吹雪の大脱走
昭和残侠伝
・吼えろ唐獅子
緋牡丹博徒
・仁義通します
・ お命戴きます
博奕打ち
・いのち札

昭和47年(1972)
関東緋桜一家
新網走番外地
・嵐呼ぶダンプ仁義
昭和残侠伝
・破れ傘
博奕打ち
・外伝



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