生贄夫人
それだけは、それだけは堪忍して…言葉と裏腹に屈辱の快楽が人妻の身体をつきぬける!

1974年 カラー シネマスコープ 78min 日活
企画 五味春雄 製作 結城良煕 監督 小沼勝 助監督 黒沢直輔 脚本 田中陽造 撮影 森勝 
音楽 月見里太一 美術 土屋伊豆夫 録音 高橋三郎 照明 川島晴雄 編集 鍋島惇
出演 谷ナオミ、東てる美、坂本長利、影山英俊、中平哲仟、高山千草、谷文太、庄司三郎、小見山玉樹


 ロマンポルノのSM第1作『花と蛇』に引き続き、異常なセックスの数々を描写するSMシリーズ2作目。前作と同様、監督は小沼勝、脚本に田中陽造、そして悲劇のヒロインに谷ナオミのトリオで製作された。緊縛・排泄・ローソク責め・剃毛等…といったアブノーマルな世界の定番が、開放的な自然を織り交ぜながら次々と繰り広げられていく。『花芯の刺青 熟れた壺』の森勝が撮影を担当し、朽ちた荒廃的な廃屋(日活撮影所内に作り上げられた美術の土屋伊豆夫による廃屋の大セットは渾身の力作)と奥多摩の美しい自然とのコントラストを見事に映し出している。また、谷ナオミ主宰の劇団に所属している東てるみが本作で映画デビューを果たし、谷の妹分としてしばらく売り出していく事となる。前作『花と蛇』を勝手に改変したとして団鬼六の逆鱗に触れてしまい、本作はオリジナルで書き起こしたものだが、花嫁衣装で吊るされる谷ナオミの美しい映像を始めとするクオリティーの高さに、現在では世界的に高い評価を得ている。また緊縛師として浦戸宏を招き、縛られた谷ナオミの美しさを見事に表現していた。


 池永秋子(谷ナオミ)は、夫の国貞(坂本長利)が少女に悪戯をしたために行方不明になって以来、女中と二人で暮している。ある日、秋子が母の墓参に出かけた時、突然国貞が現われ、嫌がる秋子を無理矢理に、人一人いない山中のボロ小屋に連れ込んだ。そして、国貞秋子をうしろ手に縛り上げ、嬉々として秋子の体を弄んだ。秋子は何度となく逃げようとして、一度は成功したものの、救けを求めたハンターに逆に犯されてしまった。やがて国貞に見つかって縛り上げられ、国貞のなすがままになり、異常行為が繰り広げられた。いつしか、秋子もそれらの行為に歓喜するようになっていた。ある日、国貞は、心中未遂の若い男女を見つけて連れて来た。今や完全に異常セックスに魅せられた秋子は、国貞に協力して気がついた二人を縛り上げ、男の見ている前で女・薫(東てる美)を浣腸して弄ぶのだった。凄まじい光景を見て思わず欲情し昂奮した男を、秋子は男の手首だけ縛って自由にさせ、女の見ている前で男を巧みに刺激させ、男を興奮の世界に追い込んでいくのだった……。


 谷ナオミが独立系ピンク映画から日活ロマンポルノに移って2作目となる本作。前作『花と蛇』の大ヒットを受けて今回も小沼勝監督と田中陽造脚本によるSMものである。実は本作…驚く事に団鬼六原作の物ではない(前作で団鬼六の怒りをかったため、しばらくは作品を提供してもらえなかったのだ)のだが、前作以上に本作の方が団鬼六の世界に限りなく近い。いや…むしろ、前作が『花と蛇』の題名だけいただいたオリジナルに近い内容(次々と繰り出される責めは、まるでSMマニュアルのようであった)だったのに対し、本作は忠実に団鬼六の猟奇的な世界観を再現しているのだ。二人の映像作家が、プライドをかけてSMの世界に再挑戦したように思える。言ってみれば、ここから日活ロマンポルノが本格的にSM路線に本腰を入れたようなものだ。人里離れた山奥にある廃屋を舞台に谷ナオミが、理由も解らないまま様々な責め苦を味わう…というのもアンダーグラウンドのSM雑誌に出てくる設定だ。かなりSM映画としての完成度の高さから、本作をベストに選ぶ愛好家も少なくないと聞く。はっきり言ってSMという行為自体異常性愛の世界だ。だからと言って、それを否定するつもりは、もうとう無い。それどころか、その緊縛の奥底に秘められた“美への探求”に心を惹かれる。本作の中で白無垢姿の谷ナオミが天井から縛られ吊されるシーンがある。その常軌を逸した姿の中に幻想的な美しさが秘められているのだ。だからこそ、誰かれ構わず縛れば良いというものではない。谷ナオミの妹分として売り出していた東てる美も、同じように拉致監禁され責め苦を受けるがフレームの中に収まる構図が雲泥の差なのだ。
 断っておくが筆者は、SM愛好家でもなく、あくまでも映画として観ているだけだ。そんな私ですら、谷ナオミの緊縛姿に美しさを感じるのは、不謹慎かも知れないが“ミロのビーナス”を美しいと思うのと同様なのである。彼女は理由が解らぬまま夫に拉致され、廃屋で辱めを受ける。夫を演じた坂本長利は『花と蛇』に引き続きの登場。彼の常軌を逸した夫の姿を観て、「谷ナオミを今後も責め続けられるのは彼しかいない!」と思う程、得体の知れないものを持っていた。教師をしていた夫が、何故、未成年の少女を連れて行方不明となったのか?何故、突然現れて妻を監禁したのか?最後まで明確な答えを出さずに夫は妻の元を離れて行く。もしかすると、彼は凡人である自分と美しすぎる妻とのギャップに悩み、妻を自分だけの物にしようとしていたのかも知れない。それを象徴するかのような印象に残るシーンがある。便意をもよおした彼女をかわやに縄で縛ったまま連れて行き剥き出しになった尻を見つめ高揚する。SMものだからスカトロシーンを入れたのだと言ってしまえば、それまでだが夫はそこで初めて妻を自分だけの物にしたのだと確信する。しかし、妻は彼の調教に悦びを見いだしてしまい、歓喜にむせぶ彼女の顔を見て敗北感に打ちひしがれながら去って行く…という結末が効いてくるのである。

「あたし変わった…」「変わっちゃいない。あなたの本性が現れただけだ」ずっと責められ続けた谷ナオミが発する言葉に坂本長利扮する夫が失意の中でつぶやくのだった。


レーベル: 日活
販売元: ハピネット
メーカー品番: BBBN-2002 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 2,499円 (税込)

昭和42年(1967)
スペシャル
変質者
寝上手

昭和43年(1968)
女浮世風呂
徳川女系図
肉の飼育

昭和47年(1972)
しなやかな獣たち
性の殺し屋

昭和49年(1974)
花と蛇
生贄夫人

昭和50年(1975)
お柳情炎 縛り肌
レスビアンの世界恍惚
怪猫トルコ風呂
黒薔薇昇天
残酷・黒薔薇私刑
残酷・女高生
 (性)私刑
新妻地獄
濡れた欲情 ひらけ!
 チューリップ

昭和51年(1976)
濡れた壷
花芯の刺青 熟れた壷
奴隷妻
犯す!
夕顔夫人
幼な妻絶叫!!

昭和52年(1977)
(秘)温泉
 岩風呂の情事
幻想夫人絵図
女囚101しゃぶる
性と愛のコリーダ
団鬼六 貴婦人縛り壷
悶絶!!どんでん返し
夜這い海女
檻の中の妖精

昭和53年(1978)
おんなの寝室
 好きくらべ
黒薔薇夫人
団鬼六 縄化粧
団鬼六 薔薇の肉体
縄地獄

昭和54年(1979)
団鬼六 縄と肌

平成12年(2000)
サディスティック
 &マゾヒスティック



日本映画劇場とはサイトマップお近づきに…

Produced by funano mameo , Illusted by yamaguchi ai
copylight:(c)2006nihoneiga-gekijou