花芯の刺青 熟れた壺
舞いの手をかざす間に濡れ開く女の肌は蛇の化身か!

1976年 カラー シネマスコープ 74min 日活
企画 奥村幸士 製作 伊藤亮爾 監督 小沼勝 助監督 高橋三郎 脚本 松岡清治
撮影 森勝 音楽 樋口康雄 美術 土屋伊豆夫 録音 福島信雅 照明 川島晴雄 編集 西村豊治
出演 谷ナオミ、北川たか子、中丸信、花柳幻舟、蟹江敬三、長弘、結城マミ、小見山玉樹、北上忠行
近江大介、水木京一、伊豆見英輔


 『花と蛇』以来、数々の名作を送り続けて来た名コンビ、小沼勝監督と谷ナオミの作品中、頂点に位置する作品と誉れの高い本作。伝統的で古風な世界に育ってきた女と、ドライで現代的な義理の娘の二人が、一人の男をはさんで織りなす凄艶な肉欲の執念を描く官能篇。有名な刺青師である凡天太郎の監修の元、蟹江敬三が谷ナオミに“肌絵”と呼ばれる刺青を施していく描写は、一番の見所となっている。物語の核となる場面だけに、実際に女性客が彫りものを入れる所を撮影させてもらい生々しいリアアルな描写が実現した。脚本は『犯す!』の松岡清治、撮影は『真夏の夜の情事 悶え』の森勝がそれぞれ担当。前作『生贄夫人』の廃屋セットと同様に美術の土屋伊豆夫が手掛けた蔵のセットが素晴らしく、北川たか子と中丸信が絡み合う1階と、その二人を見下ろしながら自慰にふける谷ナオミがいる中2階を同じフレームに収めたシーンは、美術とカメラワークが見事に融合した屈指の名シーンとなっている。その他の共演として花柳幻舟が、主人公の親友とかつて主人公を犯した歌舞伎役者の二役を演じ回想シーンでは娘道成寺を華麗に披露している。


 歌舞伎座出入りのかつら職人の娘だった吉野みち代(谷ナオミ)は、江戸千代紙人形師の後妻となったが、半年で夫と死別し、義理の娘たか子(北川たか子)と二人きりで暮らしている。みち代は昔、歌舞伎舞台の奈落の底で、娘道成寺の蛇面、蛇身の衣装をまとった役者・尾形珠三郎に犯された少女時代の傷があった。ある日、たか子は自動車事故に遭ってしまのだが、加害者の青年・尾形ヒデオ(中丸信)の顔を見て、みち代はハッと息を呑んだ。ヒデオはみち代を犯した珠三郎の忘れ形見であったのだ。数日後、みち代はヒデオの家に招かれて、珠三郎の遺品を見せてもらった。その遺品のなかに、あの娘道成寺の蛇の衣装を見つけたみち代は、異常な興奮にせめられた。その興奮のさめやらぬうち、おのずとみち代はヒデオに抱かれてしまうのだった。二匹の蛇のように絡み合い、お互いの生命を吸い尽すように喘ぎ悶える、そこへ、心配したたか子がふいに訪ねて来た。長物の中に穏れたみち代の側で、たか子はヒデオに飛びついていった。ヒデオもたか子の欲情に、次第にひきずり込まれていった。2階からその光景を見ていたみち代は、土砂降りの雨の中を夢遊病者のように彫師の辰(蟹江敬三)の家へたどり着き、道成寺の刺青を彫って欲しいと嘆願する。道成寺の彫り物を身にまとったみち代は、その身体をヒデオの前にさらけ出し…。


 小沼勝監督と谷ナオミのコンビによる数多の作品の中で本作を最高傑作としてベストワンに挙げる人も多い。前作『濡れた壺』で縛り無しの“精神的SM”で本物の演技力を見せてくれた谷ナオミだったが本作は彼女が持つ凄まじいまでの鬼迫(気迫ではなく、あえて鬼迫と書く)が更に、前面へと押し出されている。彼女が蟹江敬三演じる彫り師に、娘道成寺の一場面(かつて少女の頃の彼女を犯した歌舞伎役者・尾形珠三郎の十八番であった演目)の刺青を彫ってもらうシーンが最大のヤマ場。本家本元の東映任侠映画ですらかなわない程の壮絶なシーンとなっていた。谷ナオミのキメ細かい肌に鬼才・凡天太郎の手による墨を打つ(まさに“打つ”という表現が相応しい)度に、一刺し一刺しの痛みがこちらまで伝わってくる。青刺を打った後、色を安定させるために風呂に浸かる場面で、苦痛に喘ぐ彼女の表情は、それまでの緊縛もので見せてくれたそれを遥かに凌ぐ。完成した清姫の化身・大蛇を抱く谷ナオミが怪しい光の中に浮かび上がる姿は正に現代に蘇った清姫そのもの。かつて少女だった彼女の純潔を奪った役者とその息子に対する屈折した感情が青刺という衣を纏う…。その青刺を纏った途端に豹変し、男を喰らう魔物へと変わる谷ナオミの演技が凄い。それまで、控えめだった彼女が積極的に男を求め、絡み付く姿は正に蛇そのもの。衣といえば特筆すべき点に衣裳も忘れてはならない。彼女は自分を犯した歌舞伎役者が遺した清姫の衣裳を身にまとい鏡の前で舞うシーンがある。複雑な想いと密かに燃え上がる情炎が顕在化する刺激的なシーンだ。
 カメラマン森勝によるカット割り、カメラワークが、また素晴らしい。階下で抱き合う歌舞伎役者の息子と娘の姿と天井裏の中二階のようか踊場から彼らの行為を覗き見して自慰行為にふける谷ナオミの姿をワンカットでフレームに収める完璧なまでの計算。こんなに迫力のある絡みのシーンはかつてあっただろうか。それとは対象的にカメラは、江戸千代紙を作る谷ナオミの静的な美しさを追い…また、しのつく雨の中、和服姿で下町を歩き、雨宿りする軒先で困った表情で天を仰ぐ…本作の中で谷ナオミの運命を変えてしまう彫り師の男と出逢う場面のなんと叙情豊かな事だろうか。こうした映像美は、金を掛けたからといって作り出せるものではない。また、彼女が青刺を入れる前と後では、ガラリとカメラワークが変化するのも意図的であろうか?肌に絵を入れる事は、何か別の物に変化するという意味があると聞く。墨を入れてからの谷ナオミは、前半の彼女とは全く別の…正に異形の物と化してしまったかの如く、自ら男の体を求めて上になる姿が怖い。谷ナオミの親友でバーのママと回想シーンの尾形菊三郎の二役を演じた花柳幻舟が上手い!また、義理の母を慕う余りに崩壊への道を辿る北川たか子の演技も見逃せない。

「道成寺を彫って下さい」愛する歌舞伎役者の息子に対して情愛の念を拭い去れないヒロインが、意を決して彫師の元へ赴くのだ。


ビデオ、DVD共に廃盤後、未発売

昭和42年(1967)
スペシャル
変質者
寝上手

昭和43年(1968)
女浮世風呂
徳川女系図
肉の飼育

昭和47年(1972)
しなやかな獣たち
性の殺し屋

昭和49年(1974)
花と蛇
生贄夫人

昭和50年(1975)
お柳情炎 縛り肌
レスビアンの世界恍惚
怪猫トルコ風呂
黒薔薇昇天
残酷・黒薔薇私刑
残酷・女高生
 (性)私刑
新妻地獄
濡れた欲情 ひらけ!
 チューリップ

昭和51年(1976)
濡れた壷
花芯の刺青 熟れた壷
奴隷妻
犯す!
夕顔夫人
幼な妻絶叫!!

昭和52年(1977)
(秘)温泉
 岩風呂の情事
幻想夫人絵図
女囚101しゃぶる
性と愛のコリーダ
団鬼六 貴婦人縛り壷
悶絶!!どんでん返し
夜這い海女
檻の中の妖精

昭和53年(1978)
おんなの寝室
 好きくらべ
黒薔薇夫人
団鬼六 縄化粧
団鬼六 薔薇の肉体
縄地獄

昭和54年(1979)
団鬼六 縄と肌

平成12年(2000)
サディスティック
 &マゾヒスティック



日本映画劇場とはサイトマップお近づきに…

Produced by funano mameo , Illusted by yamaguchi ai
copylight:(c)2006nihoneiga-gekijou