続男はつらいよ
天に軌道のある如く人それぞれに運命があり、私ことフーテンの寅、望郷の念やみがたく、再び帰ってまいりました。

1969年 カラー シネマスコープ 93min 松竹(大船撮影所)
製作 斉藤次男 監督、脚本、原作 山田洋次 脚本 小林俊一、宮崎晃 撮影 高羽哲夫
音楽 山本直純 美術 佐藤公信 録音 小尾幸魚 照明 内田喜夫 編集 石井巌 装置 小野里良
出演 渥美清、倍賞千恵子、森川信、三崎千恵子、前田吟、笠智衆、太宰久雄、佐藤蛾次郎、津坂匡章
ミヤコ蝶々、東野英治郎、佐藤オリエ、山崎努、風見章子、財津一郎、関敬六、江端高志、山本幸栄


 前作『男はつらいよ』が予想を遥かに上回る大ヒットを記録したため急遽、3ヵ月後に公開されたシリーズ第2作目。テレビシリーズを踏襲した形となっている本作では、オリジナルでも描かれた寅の恩師・坪内散歩先生と、その娘で寅の幼馴染みでもある夏子(テレビ版では役名は冬子)が登場。テレビ版と同じキャラクターを東野英治郎と佐藤オリエがそれぞれ演じている。寅は夏子に惚れてしまいながらも、当然失恋で終わってしまうというメインストーリーに対して、寅の生みの親で、京都のラブホテルを経営している女将との再会というサブストーリーの2本軸で構成されている。瞼の母を演じるのは芸達者・ミヤコ蝶々。感動の再会を夢見ていた寅に対して悪態をつき大喧嘩を始めてしまうシーンは、個性溢れる2大コメディアンの神髄を楽しむことが出来る。出演陣は前作と同じメンバーを集め、ある意味ここから映画版『男はつらいよ』シリーズの骨子が固まったと言っても良い。スタッフもほぼ前作と同様、『男はつらいよ』の山田洋次監督が、小林俊一、宮崎晃と共同で脚本を書いている。撮影は、以降、シリーズ殆どのカメラマン『喜劇 女は度胸』の高羽哲夫が担当している。


 フーテンの寅こと車寅次郎(渥美清)は、故郷・葛飾を離れ、弟分の登としがない稼業を続けていた。そんなある日、柴又に戻って来た寅は、中学時代の坪内先生(東野英治郎)の家の前を通りかかり、懐かしさの余り、玄関先で挨拶のつもりが、出てきたお嬢さん(佐藤オリエ)の美しさに惹かれ、さっきの決心もどこへやら、上がりこみ、飲むわ食うわがたたって、腹痛を起こし、病院へかつぎこまれ、一週間の入院を命じられた。すっかり元気になった寅は、またしても騒動を起こし、柴又を後にする。次に寅が向かったのは関西。かねがね母親が関西にいると聞いていた寅が、仲間に頼んで捜していたところ、偶然、坪内先生と一緒に買物をしているお嬢さんと出会った。母の働くホテルまでお嬢さんについてもらったのだが、その母親は、寅の夢の中に出てくるやさしい母親と違い、厚化粧をし、三流どころの連れ込み宿を経営する女(ミヤコ蝶々)だった。寅の顔を見るやいなや「金の無心なら無いぞ」という母の言葉にショックを受けた寅は失意の中、坪内先生らと柴又に帰るのだった。半月後、先生は他界し、寅が世話になった病院の藤村医師(山崎努)とお嬢さんの結婚を聞いた寅は、またも悲しみに打ちひしがれ、詑びるお嬢さんの言葉を胸に、登とともに柴叉を後にした。


 前作『男はつらいよ』では、寅次郎が故郷・柴又へ戻り、さくらとの再会から、さくらの結婚まで兄妹愛に主軸を置いて描いていた。他にも寅次郎を取り巻く人々とのエピソードを交えながら物語を進行させなくてはならないため、あまり寅次郎個人については詳しく描かれていなかった。その分、シリーズ2作目となる本作では“とらや”の主要な登場人物たちは控え目(さくらですら登場シーンは少ないのだ)にして、車寅次郎個人にフォーカスを当てている。言い換えれば、『男はつらいよ』という映画は「柴又の群像劇ではなく、渥美清演じる車寅次郎の物語なのだ」と再認識させたのが本作と言っても過言ではないだろう。
 生き別れの母との再会から寅次郎の生い立ちに触れる前半から、恩師の死を経て命の儚さ尊さを学ぶ後半へと、寅次郎が少しずつ成長していく姿が描かれているのが本作の見どころ。寅次郎を捨てた実の母をミヤコ蝶々が扮し、何十年ぶりの再会シーンでは絶妙な掛け合いを見せて楽しませくれた。京都の連れ込み宿で働いている下働きのおばさんを母と思ったら、実は宿の経営者側だったというオチには大爆笑させられた。また、前作で共演した大御所・志村喬に続き、本作では寅次郎を叱咤しながら、導いてゆく恩師を名優・東野英治郎が扮して、素晴らしい演技を見せてくれる。酔っ払うと寅次郎に「お前はバカだ!しかし、お前よりバカはこの世の中にいっぱいいる」と説教を垂れる時のセリフ回しや、再会した母親にショックを受けてオイオイ泣く寅次郎と一緒に「俺も泣いてやろう」と泣いてやるシーンは、凄い芝居を見せてもらった…と感激してしまった。
 二人の名優を相手に今回の寅次郎は…と、言うとガキそのもの。母親との再会にショックを受けて、最愛のマドンナや恩師の前で愚痴を言ったりメソメソするのは序の口。前半では、突然の腹痛で緊急入院した寅次郎が弟分と共に病院を抜け出して酒を飲んだ挙げ句に無銭飲食で留置所に入れられてしまうのだから、本当にしょうがない兄貴全開なのだ。まぁ、これじゃあマドンナも寅次郎に振り向くはずもなく山崎務演じるお医者さんに奪われるのも無理はない。しかし、これこそが『男はつらいよ』の主人公、車寅次郎の原点であり、今後のシリーズは本作を起点にスタートした…と筆者は位置付けている。(誤解を覚悟で申せば、1作目はプロローグですね)結果として寅次郎が何を学び得たのかは、山田洋次監督は、ラストシーンでしっかりと描かいている。マドンナの佐藤オリエと結婚した山崎務が京都に新婚旅行で訪れると、そこには喧嘩しながらも一緒に歩く寅次郎と母親の姿が。そこで初めて、親子の愛情について語っていた亡き恩師の言葉が活きてくる…という心憎い演出に思わず涙してしまう。

「顔で笑って心で泣いてってよ…そこが渡世人のつれえところよ」マドンナにふれらて出て行く時、引き止めるさくらに向かって言うセリフ。男の哀しさが滲み出ているシーンだ。


レーベル: 松竹(株)
販売元: 松竹(株)
メーカー品番: DB-502 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 3,591円 (税込)

昭和44年(1969)
男はつらいよ
続男はつらいよ

昭和45年(1970)
男はつらいよ
 フーテンの寅
新・男はつらいよ
男はつらいよ 望郷篇

昭和46年(1971)
男はつらいよ 純情篇
男はつらいよ 奮闘篇
男はつらいよ
 寅次郎恋歌

昭和47年(1972)
男はつらいよ 柴又慕情
男はつらいよ
 寅次郎夢枕

昭和48年(1973)
男はつらいよ
 寅次郎忘れな草
男はつらいよ
 私の寅さん

昭和49年(1974)
男はつらいよ
 寅次郎恋やつれ
男はつらいよ
 寅次郎子守唄

昭和50年(1975)
男はつらいよ
 寅次郎相合い傘
男はつらいよ
 葛飾立志篇

昭和51年(1976)
男はつらいよ
 寅次郎夕焼け小焼け

男はつらいよ
 寅次郎純情詩集

昭和52年(1977)
男はつらいよ
 寅次郎と殿様
男はつらいよ
 寅次郎頑張れ!

昭和53年(1978)
男はつらいよ
 寅次郎わが道をゆく
男はつらいよ
 噂の寅次郎

昭和54年(1979)
男はつらいよ
 翔んでる寅次郎
男はつらいよ
 寅次郎春の夢

昭和55年(1980)
男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花
男はつらいよ
 寅次郎かもめ歌

昭和56年(1981)
男はつらいよ
 浪花の恋の寅次郎
男はつらいよ
 寅次郎紙風船

昭和57年(1982)
男はつらいよ
 寅次郎あじさいの恋
男はつらいよ
 花も嵐も寅次郎

昭和58年(1983)
男はつらいよ
 旅と女と寅次郎
男はつらいよ
 口笛を吹く寅次郎

昭和59年(1984)
男はつらいよ
 夜霧にむせぶ寅次郎
男はつらいよ
 寅次郎真実一路

昭和60年(1985)
男はつらいよ
 寅次郎恋愛塾
男はつらいよ
 柴又より愛をこめて

昭和61年(1986)
男はつらいよ
 幸福の青い鳥

昭和62年(1987)
男はつらいよ 知床慕情
男はつらいよ
 寅次郎物語

昭和63年(1988)
男はつらいよ
 寅次郎サラダ記念日

平成1年(1989)
男はつらいよ
 寅次郎心の旅路
男はつらいよ
 ぼくの伯父さん

平成2年(1990)
男はつらいよ
 寅次郎の休日

平成3年(1991)
男はつらいよ
 寅次郎の告白

平成4年(1992)
男はつらいよ
 寅次郎の青春

平成5年(1993)
男はつらいよ
 寅次郎の縁談

平成6年(1994)
男はつらいよ
 拝啓 車寅次郎様

平成7年(1995)
男はつらいよ
 寅次郎紅の花

平成9年(1997)
男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇



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