男はつらいよ
私、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使いました。根っからの江戸っ子、姓名の儀は車寅次郎。人呼んでフーテンの寅と発します。

1969年 カラー シネマスコープ 91min 松竹(大船撮影所)
製作 上村力 企画 高島幸夫、小林俊一 監督、脚本、原作 山田洋次 脚本 森崎東
撮影 高羽哲夫 音楽 山本直純 美術 梅田千代夫 録音 小尾幸魚 照明 内田喜夫 編集 石井巌
出演 渥美清、倍賞千恵子、光本幸子、笠智衆、志村喬、森川信、前田吟、津坂匡章、佐藤蛾次郎
関敬六、三崎千恵子、太宰久雄、近江俊輔、広川太一郎、石島戻太郎、志賀真津子、津路清子


 後に国民的な人気を得る長寿シリーズの記念すべき第1作目。東京葛飾柴又出身、テキ屋稼業で普段は旅暮らしの“フーテンの寅”こと車寅次郎が巻き起こす大騒動と、旅先で出会ったマドンナとの淡い恋。そんな寅の奮闘が、たった一人の妹さくらと帝釈天参道で団子屋を営む叔父夫婦らを巻き込んで繰り広げられる。『喜劇 一発大必勝』の山田洋次と『いい湯だな 全員集合!!』の森崎東が、脚本を共同執筆し、山田洋次が監督した人情喜劇。撮影はシリーズ最終作までカメラマンとして撮り続けた名匠・高羽哲夫が担当している。山本直純による主題歌は映画史上に残る名主題歌として大人から子供まで幅広い層に受け入れられている。本来、1968年10月からフジテレビ系で半年間放送されたテレビシリーズだったが、最終回寅がハブに噛まれて死んでしまう事に、視聴者から抗議が殺到する程の人気番組であった。おいちゃんを演じる森川信と舎弟の津坂匡章はテレビシリーズから引き続いての出演である。


  車寅次郎(渥美清)は、“フーテンの寅”と呼ばれる香具師。父親と喧嘩してとびだした中学の時以来、ヒョッコリ故郷の葛飾柴又に帰って来た。というのも唯一人の妹・さくら(倍賞千恵子)を残して両親が死んだと風の便りに聞いたため。叔父の家へと向った寅次郎はそこで、美しく成長したさくらに会い、大感激。妹のためなら何でもしようと発奮、妹可愛さの一心で、さくらの見合の席へと出かけたものの、慣れぬ作法に大失敗。縁談をこわしてしまった。いたたまれずに、また旅にでた寅次郎は、奈良でお寺巡りをしている柴又帝釈天の御前様(笠智衆)と娘の冬子(光本幸子)に会い、冬子の美しさに魅せられ、故郷にと逆戻り。そんな寅次郎を待っていたのは、工場の職人・博(前田吟)の「さくらさんが好きです」という告白だった。博の真剣さにうたれ、何とかしてやろうとしたものの、寅次郎は、もち前の荒っぽさで、またまた失敗。が、かえってこれが、博、さくらを結びつけた。さくらの結婚の後の寂しさを、冬子の優しさに慰められていた寅次郎は、ある日、「寅がお嬢さんに惚れている」という噂を耳にし、冬子に迷惑がかかることを恐れて、地方での香具師商売にと、旅立つのだった。


 『男はつらいよ』シリーズが、渥美清の死によって終了した翌日、もう一度、1作目を観直してみた。何度も観ている1作目なのだが、内容も笑いも全く色褪せていない事に驚きながら、改めて渥美清の存在感と山田洋次監督の卓抜したセンスに、同じ時代を過ごせた事に感謝したものだった。それから、更に10年以上の時を経て、『男はつらいよ』1作目を映画館で観る機会に恵まれたのだが…全く以前と同じ輝きを放ち、客席をドッと湧かせていたのは驚愕と言ってよいだろう。日本の喜劇のエッセンスが全て濃縮され、更に渥美清というキャラクターによって二度濾されているおかげで、非常にきめ細かい笑いが次から次へと応酬してくる。正直言って喜劇(中でも日本の喜劇)というものは、ある程度荒削りで泥臭いものであると思っていた。それがグイグイ話しを強引に引っ張って行くものだから、そのパワー故の面白さ(それが無いと喜劇は人情ものになってしまう事が多い)があるのだと理論付けていたのだが…。しかし、『男はつらいよ』は、いくつものエピソードが絡み合い重なり合いながら、繊細なる計算の上で成り立っており、従来の喜劇とは明らかに異なっていた。
 冒頭、寅さんが故郷・葛飾柴又に何十年ぶりに戻り、いきなり帝釈天のお祭りに参加して、あっという間に観客へキャラクターをインプリンティングしてしまう。そこからは、もう山田洋次監督と渥美清の独壇場で、観客は二人のペースに乗せられたままラストまで息つく暇なく傍若無人な主人公・寅さんの動向に一喜一憂する事となる。ご存知、妹のさくらを演じた倍賞千恵子の奇跡としか言いようのない可愛らしさが渥美清のローカルな可笑しさと見事なコントラストを醸し出し、この二人の掛け合いがシリーズの核となってゆくわけだ。“俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ〜”の主題歌の通り、さくらのお見合いを見事にぶち壊すシーンから寅さんの暴走は拍車が掛かり、それを責められた挙げ句に家族と大ゲンカ…さくらにまで手を上げる始末で、翌日、反省した寅さんは、コッソリ旅に出てしまう。この一連の出来事を見事なまでに計算されつくされたセリフのタイミングと職人技としか言いようの無い編集の妙によって日本の喜劇史上、最高のシーンにしてしまった。とにかく、全てをグチャグチャにしておいて、一白置いてから、次の事件へと導く…大きな波が観客が飽きそうな頃合いを見計らってやってくるのが初期における『男はつらいよ』の特長。奈良でお寺見学している御前様の横で大はしゃぎしている外人を「どこも騒々しい…」と苦い顔をしていると、その外人が「トラサン!トラサン!」と呼び、下手から面倒臭そう登場する寅さん。たったこれだけなのだが、繋ぎのエピソードと呼ぶには笑いの要素がギュッと凝縮されている名シーンとなっている。一事が万事、全てのエピソードが丁寧に作られており、気持ちの良い笑いとなっているものだから、観客もストレスを感じず腹から笑えるのである。後半、さくらに想いを寄せる博の気持ちに気付き、大反対していた寅さんが、いつしか応援する側に回わるという展開も実に気持ち良い。1作目は面白いのが当たり前…なのだが、観ている自分の年齢や環境が変わっているにも関わらず、同じように笑えるのは、本当にすごい事だと思う。

「お前と俺とは別な人間なんだぞ。早い話しが俺がイモ食って、お前の尻からプッと屁が出るか?」寅さんの屁理屈(駄洒落じゃないです)は、本当に天下一品である。しかも的を得ているのだ。


レーベル: 松竹(株)
販売元: 松竹(株)
メーカー品番: DB-501 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 3,591円 (税込)

昭和44年(1969)
男はつらいよ
続男はつらいよ

昭和45年(1970)
男はつらいよ
 フーテンの寅
新・男はつらいよ
男はつらいよ 望郷篇

昭和46年(1971)
男はつらいよ 純情篇
男はつらいよ 奮闘篇
男はつらいよ
 寅次郎恋歌

昭和47年(1972)
男はつらいよ 柴又慕情
男はつらいよ
 寅次郎夢枕

昭和48年(1973)
男はつらいよ
 寅次郎忘れな草

男はつらいよ
 私の寅さん

昭和49年(1974)
男はつらいよ
 寅次郎恋やつれ
男はつらいよ
 寅次郎子守唄

昭和50年(1975)
男はつらいよ
 寅次郎相合い傘

男はつらいよ
 葛飾立志篇

昭和51年(1976)
男はつらいよ
 寅次郎夕焼け小焼け

男はつらいよ
 寅次郎純情詩集

昭和52年(1977)
男はつらいよ
 寅次郎と殿様
男はつらいよ
 寅次郎頑張れ!

昭和53年(1978)
男はつらいよ
 寅次郎わが道をゆく
男はつらいよ
 噂の寅次郎

昭和54年(1979)
男はつらいよ
 翔んでる寅次郎
男はつらいよ
 寅次郎春の夢

昭和55年(1980)
男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花
男はつらいよ
 寅次郎かもめ歌

昭和56年(1981)
男はつらいよ
 浪花の恋の寅次郎

男はつらいよ
 寅次郎紙風船

昭和57年(1982)
男はつらいよ
 寅次郎あじさいの恋

男はつらいよ
 花も嵐も寅次郎

昭和58年(1983)
男はつらいよ
 旅と女と寅次郎
男はつらいよ
 口笛を吹く寅次郎

昭和59年(1984)
男はつらいよ
 夜霧にむせぶ寅次郎
男はつらいよ
 寅次郎真実一路

昭和60年(1985)
男はつらいよ
 寅次郎恋愛塾
男はつらいよ
 柴又より愛をこめて

昭和61年(1986)
男はつらいよ
 幸福の青い鳥

昭和62年(1987)
男はつらいよ 知床慕情
男はつらいよ
 寅次郎物語

昭和63年(1988)
男はつらいよ
 寅次郎サラダ記念日

平成1年(1989)
男はつらいよ
 寅次郎心の旅路
男はつらいよ
 ぼくの伯父さん

平成2年(1990)
男はつらいよ
 寅次郎の休日

平成3年(1991)
男はつらいよ
 寅次郎の告白

平成4年(1992)
男はつらいよ
 寅次郎の青春

平成5年(1993)
男はつらいよ
 寅次郎の縁談

平成6年(1994)
男はつらいよ
 拝啓 車寅次郎様

平成7年(1995)
男はつらいよ
 寅次郎紅の花

平成9年(1997)
男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇



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