1999年の夏休み
僕を殺したのは、君だ!!時間(とき)は止まり、美少年たちの危険な愛が始まる。

1988年 カラー ビスタサイズ 90min ニュー・センチュリー、ソニービデオソフトウェア
製作 岡田裕、岸栄司 監督 金子修介 脚本 岸田理生 撮影 高間賢治 照明 安河内央之
音楽 柳田ヒロ、中村由利子、長崎行男 美術 山口修 録音 神保小四郎 編集 冨田功
出演 宮島依里、大寶智子、中野みゆき、水原里絵


 静かな湖の畔にある世間から隔絶された全寮制の学院に少女のような美しい少年たちが生活している。そこは現代の日本のどこかであるようなのだが、いつの時代でどこの国の物語なのか、特定されていない。しかし、決して現代の日本から目を背けたノスタルジーの世界ではなく、自分の世界に閉じこもり人間関係から逃避しながらも、それでも人とのふれあいを求めている。そんな時代に少女の役者が少年を演じるという実験的な手法を選んだ本作は鋭い視点から様々な問題を投げかけている。本作のベースとなるのは少女漫画の不朽の名作として名高い萩尾望都の“トーマの心臓”である。原作を読んで衝撃を受けた平成ガメラシリーズの金子修介監督が映画化を熱望して実現した企画だ。少年たちを演じる少女たちは本作がデビュー作となる宮島依里、『ロックよ、静かに流れよ』の大寶智子、『ビーパップ・ハイスクール高校与太郎物語』の中野みゆき、そして後の深津絵里と改名する前の水原里絵が難しい役柄を好演。照明の安河内央之の作り上げる瑞々しいライティングによってヨーロッパ映画を思わせるような色彩の映像を撮影監督・高間賢治は作り上げている。また、全編にリリカルでロマンティックな中村由利子のピアノの旋律も作品に透明感を与えている。


 山と森に囲まれたある全寮制の学院に少女のように美しい14、15歳の少年達が同居生活を送っていた。初夏、悠(宮島依里)という少年が湖に飛び込んで自殺した。夏休みになってほとんどの生徒は家へ帰ったが、和彦(水原里絵)、直人(中野みゆき)、則夫(大寶智子)の3人は寮に残った。悠は和彦にほのかな愛を寄せて何度も手紙を書いた。それはまだ愛と呼ぶには幼く決して性的なものではなかったが、和彦は拒絶し自分を遠くから見つめることさえ禁じた。そして、悠は自殺したのだ。自責の念に駆られる和彦。そんな和彦を思いやりで優しく包むリーダー格の直人。下級生の則夫も和彦が好きで悠に対し嫉妬を抱いていた。ある日3人の前に悠にそっくりの薫(宮島依里)という転入生が現われた。和彦も直人も則夫も悠ではないかと疑うが、内気で大人しい悠と違って薫は快活な少年だった。しかし、薫と悠は性格こそ違っても顔は瓜二つで、趣味趣向はよく似ていた。和彦は悠が生まれ変わって自分に復讐に来たのではないかと思った。あるとき則夫の姿が見えなくなった。3人で森を探したところ則夫は蹲っていた。皆が卒業していなくなってしまうときのことを考えたら淋しくなったのだという。薫は母の死の知らせに家へ帰ったが、和彦は心配になり後を追った。寮へ戻り、和彦と薫は湖畔で話し合う。和彦はなんとか真相を聞き出そうとするが薫は和彦を道連れに湖に飛び込んだ。和彦は助かったが薫は死んでしまった。しかし、ある日また学院に一人の転入生がやって来た。そして、その少年の面影は悠にも薫にもそっくりだった。


 白樺と芝生の緑…そして湖の紺碧がとても綺麗な映画だ。平成ガメラシリーズの監督として知られる金子修介がメガホンを取る本作は、まるでこの世のものとは思えない森に囲まれた私立学校の寮が舞台となっている。冒頭、崖の上から美しい少年が湖に身を投じるシーンから始まる。少年は何故、自殺したのか?理由がハッキリしないまま夏休みを迎え、寮には帰省しない三人の生徒だけが残った。皆、自殺した生徒の友人なのだが、演じている全員が少女というところがユニークだ。その中に芸名を変える前の深津絵里が出演しており、さすがデビュー間もない頃であるにも関わらず上手いなぁ…と感心させられた。まるでイギリスの寄宿舎みたいな真っ白な寮で、ひたすらコンピューターのキーボードを叩く三人の姿は人間性を感じさせない無機質で機械のようだ。第一、大人はどうした?いくらなんでも夏休みで職員がいなくなるなんて事はあるのだろうか…?等と疑問を抱き始めたところへ死んだ少年と瓜二つの転校生がやってくる。誰もいない寮に転校生というのも不自然な話しだ。元々、金子監督の原案で少年たちはクローンだったらしい…という設定が何となく理解が出来る。
 しかし…どんどん、ストーリーが展開していく内に、むしろ“桃源郷(ユートピア)”の話に近いのではないか?と思った。そこは、山と森に囲まれた場所で、そこの水を飲んで暮らす人々は歳を取らないという。大人になる事を拒んだ少年たちに、均衡が崩れる事態が訪れる。それは“愛”の出現だ。人を愛する事で味わう苦しみを包括できずに死を選ぶ少年と、告白された“愛”を受け入れられずに残酷なまでに拒絶する少年。子供だった頃には無かった感情で揺れ動いたために生じる亀裂が“桃源郷”の終焉を予感させる。金子監督は、敢えて少女たちに少年を演じさせる事で非現実的な場所を作り上げたかったのではないだろうか?ラストで、また湖で命を絶った少年が再び転校生として現れた時、生命の輪廻ではなく執念の輪廻…みたいなものを感じた。
 また、本作の見どころは“ピクニック・アット・ハンギングロック”を彷彿とさせる軽井沢の自然が醸し出す崇高な美しさ。萩尾望都のコミックをベースとして創作されたストーリーを岸田理生が透明感のあるシナリオに仕上げている。さすが、寺山修司に師事していただけあって不安定な精神の揺れを見事に描き出していた。更に、高間賢治によるカメラワークと安河内央之による蛍光灯ライティング(本作で初めて採用されている)の柔らかな光が、主人公たちの純真無垢な瑞々しい表情を的確に表現。その映像は、ヨーロッパ映画のようだ。金子監督は、平成ガメラシリーズでも証明していたが、少女をアニメーション的に描くのに長けている。本作もまた、その才能を遺憾なく発揮しており、新人女優たちの悩める表情を美しくフレームに収めていた。

「好きだよ…同情されるのって…」まだ未成熟な少年が言う本音。母親が死んで一人になった薫のセリフが余りにも真っ白でドキッとさせられる。


レーベル: Spe ビジュアルワークス
販売元: Spe ビジュアルワークス
メーカー品番:SVWB-5008 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 4,253円 (税込)

昭和58年(1983)
居酒屋兆治

昭和60年(1985)
魔の刻
夜叉

昭和61年(1986)
ザ・サムライ
ノイバウテン 半分人間
ビリィ★ザ★ギッドの新しい夜明け

昭和62年(1987)
新宿純愛物語
ロビンソンの庭

昭和63年(1988)
1999年の夏休み
海へ See You

平成1年(1989)
キスより簡単
風の又三郎
バカヤロー!2
 幸せになりたい
cfガール

平成2年(1990)
われに撃つ用意あり

平成3年(1991)
あいつ
無能の人
王手

平成4年(1992)
寝盗られ宗介

平成5年(1993)
月はどっちに出ている
ヌードの夜

平成6年(1994)
夢魔
RAMPO奥山監督版
119

平成7年(1995)
RAMPOインターナショナルVer
人でなしの恋

平成8年(1996)
男たちのかいた絵

平成9年(1997)
秋桜
東京日和

平成10年(1998)
秘祭
元気の神様

平成11年(1999)
白痴
黒の天使 Vol.2

平成12年(2000)
フリーズ・ミー
ホーム・スイートホーム

平成13年(2001)
連弾
DRUGドラッグ
TOKYO G.P.

平成14年(2002)
およう
黄昏流星群
 星のレストラン

平成15年(2003)
ホーム・スイートホーム2 日傘の来た道

平成16年(2004)
花と蛇
サヨナラCOLOR

平成17年(2005)
ゴーヤーちゃんぷるー

平成18年(2006)
おばちゃんチップス
旅の贈りもの0:00発

平成21年(2009)
山形スクリーム



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