ぼくんち
シアワセって、どこにある?

2003年 カラー ビスタサイズ 115min アスミック・エース=ミコット配給
プロデューサー 塚田有希、妹尾啓太 監督 阪本順治 原作 西原理恵子 脚色 宇野イサム
撮影 笠松則通 美術 小川富美夫 照明 杉本崇 音楽 はじめにきよし 主題歌 ガガガSP
録音 立石良二
 編集 荒木健夫 衣裳デザイン 有吉麻美
出演 観月ありさ、矢本悠馬、田中優貴、鳳蘭、真木蔵人、今田耕司、岸部一徳、志賀勝、新屋英子
濱口優、氏家恵、金城優花、笑福亭松之助、南方英二、武田一度、川原田樹、辻イト子、久保田磨希


 貧しくも逞しく生きる姉弟と、彼らを取り巻く人々との触れ合いを描いたドラマ。監督は『どついたるねん』で鮮烈なデビューを飾り、『顔』にて日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した阪本順治。ビックコミックスピリッツで連載され、第43回文藝春秋漫画賞受賞の西原理恵子の同名コミックを基に、『顔』の宇野イサムが原作の風合いを損なう事無く脚色。撮影を阪本監督と長年コンビを組んでいる『青い春』の笠松則通が担当している。美術は『みんなの家』の小川冨美夫が手掛け、ポップで昭和的イメージが流れる町を作り上げた。主演は『ナースのお仕事 ザ・ムービー』の観月ありさが新境地に挑んでいる。また二人の子供には、オーディションで選ばれた新人・矢本悠馬、『新・仁義なき戦い 謀殺』の田中優貴が素朴でナチュラルな演技を披露。共演に本作が映画初出演となる鳳蘭が華やかな存在感を見せる。第53回ベルリン国際映画祭出品、日本芸術文化振興会映画芸術振興事業作品。


 関西のようで、ないような“水平島”。そこに暮らす種ちがいの兄弟・一太(矢本悠馬)と二太(田中優貴)のもとに、買い物に出たきり半年も行方知れずだった母・今日子(鳳蘭)が、元ピンサロ嬢の姉・かの子(観月ありさ)を伴って帰ってきた。今日子はまたすぐいなくなったが、こうして姉弟3人の、ささやかな生活が始まった。水平島の人たちは、ちょっと変わっている。乱暴者だが、女子供には優しいチンピラのコウイチ(真木蔵人)。猫のように子供をたくさん生んだが、今は野良猫に囲まれて暮らすねこばあ。川の鉄屑を集めて暮らす、物知りの鉄じい(志賀勝)。ビニールハウスに3人の子供と暮らす男やもめの末吉。刑務所生活を繰り返す小悪党の安藤くん。味はまずいが、島に一軒しかないので繁盛している中華屋“新庄”。そして、二太が秘かな想いを寄せるも、お金のことにしか興味がない幼なじみのさおりちゃん。ある日、3人の家が人手に渡ってしまった。どうやら、今日子が新しい男に貢いだらしい。仕方なくアパートを借りて、ピンサロ勤めに戻るかの子。だが、そんな姉の姿に素直になれない一太は、独り立ちしたいとコウイチの下で裏家業の修行に精を出し、やがて一旗挙げて家を取り戻すのだと島を出て行く。一方、実はかの子の子だった二太にも別れの時が迫っていた。親戚のじっちゃんに貰われるのだ。旅立ちの日、二太はひとり、じっちゃんの船に乗り込む。こうして、息子を手放してしまったかの子は、しかし、またしても男に逃げられた母を許し、自分も二太に許してもらえるような母親になり、いつか二太を取り戻す決意をするのだった。


 おぉっ!坂本順治の作り上げた『ぼくんち』は平成の『どですかでん』ではないか!関西の小さな島にある町(場所は特定されていないが)で暮らすユニークな人々が続々と登場する度にワクワクしてしまう。その町にあるバラックや食堂、ピンサロ等の造形も素晴らしく、小川富美夫美術監督による“汚し”のセンスは抜群だ。見事に奇妙な住人たちのキャラクターと融合しており、主人公の一太と二太兄弟が住む家の居間なんかセットとは思えない生活臭が漂っている。他にも島に一軒しかないマズイ中華料理屋(一軒しかないから客が皆、マズイマズイ言いながらも繁盛しているのが笑える)や河原で鉄くず屋をやっているおっちゃん(志賀勝が渋い〜!)のホッタテ小屋なんか、実際にあったら楽しいだろうなぁと思う。坂本監督の作り上げた島は、貧乏のテーマパークのようで、行く先々で兄弟に絡んでくる奇妙な住人たちはアトラクションみたいだ。坂本監督が得意とするシニカルな笑いの中に、温かさと毒舌を散りばめた人間ドラマ(藤山直美主演『顔』のような)は、西原理恵子の世界観と共通点が多い。サイバラ漫画に出てくるお約束のキーワードである貧乏・水商売・暴力亭主…といった要素を拾いつつ、子供たちの成長物語として完結させた宇野イサムによる脚本の上手さに拍手を送りたい。主軸となる観月ありさ演じるかの子と二人の息子(この事実は最後まで一太と二太には明かされない)の物語に絡んでくる住人たちのエピソードが哀しく可笑しい。印象に残るのは真木蔵人演じる町のチンピラ・コウイチが自立しようとする一太の人生の師匠的として生きる術を教える(方法は間違っているが言っている事は正しい)ところだ。子供にシンナーのボトル詰めをさせながら「生活とカネ」と復唱させるのだからムチャクチャだが、子供が一人で生きていくのに必要な強さだ。一太が必死に大人になろうとする姿はサイバラ漫画に登場する子供たちに共通するところだが、それは子供たちが大人に頼っていられない…と、悟っている事を意味している。一太は最後に島を出て行く決断を下すのだが、この時コウイチが港までトラック(荷台に盗品らしき仏像が積んでいるのが笑える)で乗せてやるのがジーンとくる。
 このように、脚本も美術も音楽も素晴らしいのだが、やはり本作で一番の功労賞はキャスティングと全出演者に与えるべきだろう。サイバラ漫画の特長は変なキャラクターたちが好き勝手にガヤガヤする群像劇であるところ。まずは、坂本監督が行った独特のオーディション(俳優っぽい子は落として親に無理やり連れて来させられた子を優先した)で採用された二人の子役、矢本悠馬と田中優貴の存在感がたまらなくイイ!特に二太を演じた田中優貴のマユの垂れた情けない表情は、「どこのオッサンだ?」とツッコミ入れたくなる程サイコーな顔を持っている。他にも新屋英子扮する猫婆やビニールハウスで子供たちと内職している岸部一徳扮する末吉だったり…勿論、顔すら登場しない町のアナウンス嬢(「公道に糞尿をしないでください」と淡々とした口調がステキだ)に至るまで、ちょっとでも目を離すと美味しいところを見過ごしてしまう。中でも観月ありさの演技は、間違いなく彼女の最高傑作と言って良い!コウイチ相手に一太をかばって「アタシのオマ〇コで稼いで返してやるよ!」と啖呵を切る場面に思わず、全身が震えた。ラストで観月ありさが海に向かってラーメンをすすりながら立ちすくむ姿がカッコ良かった。エンドロールで流れるガガガSPの“卒業”が力強く、そして泣かせる。こういうエンディングに弱い。

「泣きたい時は泣いた方がええし、笑いたい時は笑った方がええんと違うんか?」泣き顔の二太に「泣いたらあかん!」と叱るかの子に一太が言うセリフ。どちらの意見も正論だと思う。


レーベル:ジェネオン
販売元: ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
メーカー品番: PIBD-1235 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 3,948円 (税込)

平成15年(2003)
ぼくんち

平成21年(2009)
いけちゃんとぼく

女の子ものがたり

平成22年(2010)
パーマネント野ばら

平成23年(2011)
毎日かあさん



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