翔んだカップル
クラスメートが二人っきりで一つ屋根ン下に住むなんて…。

1980年 カラー シネマスコープサイズ 106min 東宝
製作 多賀英典 監督 相米慎二 脚本 丸山昇一 原作 柳沢きみお 撮影 水野尾信正 美術 徳田博
音楽 小林泉美 照明 野口素胖 録音 酒匂芳郎 編集 井上治 プロデューサー 伊地智啓、金田晴夫
出演 薬師丸ひろ子、鶴見辰吾、尾美としのり、石原真理子、三谷昇、H2O、真田広之、原田美枝子
円広志、西田浩、吉見秀幸、酒井康明、斉藤建夫、岡竜也、長谷川純代、石川ルミ


 昭和53年3月から「週刊少年マガジン」に連載されていた柳沢きみお原作による『翔んだカップル』はヤング読者層の圧倒的な支持を受け、実に単行本の売れ行きは430万部以上という驚異的な数字に達した。この爆発的人気漫画をより自由な発想のもとに、原作と同じ年齢の俳優で映画いてみようという発想から映画『翔んだカップル』はスタートした。不動産屋の手違いで同居する事となった高校一年生の男女―田代勇介と山葉圭の戸惑いと心の揺らめきを縦軸に、二人を取り巻く教師やクラスメイト達をを横軸に描いた新しいカタチの青春映画となった。主人公の田代勇介にはTBSの大ヒット学園ドラマ“3年B組金八先生”で、15才の父となった中学生を好演した鶴見辰吾、山葉圭には『野性の証明』でデビュー以来、国民的アイドルとなった薬師丸ひろ子が扮している。また学校一の才女・杉村秋美には新人だった石原真理子、そして秀才・中山には『転校生』前のデビューしたての尾美としのりがそれぞれ扮している。曽根中生、長谷川和彦などの助監督をしていた相米慎二が監督デビューを飾り、脚本を新進気鋭のシナリオライターとして脚光を浴びていた丸山昇一が手掛けている。音楽は若者の揺れる心を軽妙に表現する女性ミュージシャン小林泉美が担当している。


 弁護士になる夢を抱いて、九州から東京の名門校、北条学園高校に入った田代勇介(鶴見辰吾)は海外に行っている叔父の留守宅に住むことになった。一人で住むには家が広すぎるため、男に限るという条件で不動産屋に間借人を頼んだのだが、やってきたのはクラスメートの山葉圭(薬師丸ひろ子)だった。あろうことか高一の男女がひとつ屋根の下に…。お金を全て使ってしまった圭に同情した勇介は、次の仕送りが来るまでの1ヵ月間だけ同居を認める事にした。勇介の入部したボクシング部のキャプテン織田やクラスの秀才中山(尾美としのり)も圭を狙っており、勇介も圭を憎からず思っているが、二人の同居生活がいつバレるかとヒヤヒヤの毎日。屈託のない圭に勇介はなぜか反抗的な態度をとってしまうのだった。一年生の遠足の日、学校一の才女、杉村秋美(石原真理子)が他のガリ勉生徒と一味違う勇介に興味持ち近づいてきた。勇介は彼女のマンションに遊びにくるよう誘われ、理知的で大人の雰囲気を漂わす杉村には素直な気持で接してしまう。約束の1ヵ月が過ぎたところで、勇介と圭のおかしな共同生活は、織田キャプテンの居候騒動などを経て、訳が分らなくなってきていた。二人とも充分、意識しているのにお互いに「好き」という言葉が素直に言い出ない。勇介は杉村のマンションに逃げ、圭は中山とデートを重ねるのだった。意地の張りあいのまま夏休みを迎え、「季節がかわれば……」とばく然と勇介は九州へ帰った。新学期、圭は帰省中に知り合った大学生の星田(真田広之)に夢中になり、杉村はアメリカ留学を決意していた。一方、圭との素直な生活を夢見て東京に戻った勇介は、ボクシングの新人戦を控え、くたくたになるまでシゴかれる毎日を送っていた。やけくそになった勇介は相変わらず圭を思う中山に同居の告白をしてしまう。驚いた中山は逆上して、そのことを学校に密告してしまった。新人戦を翌日に控えたある日、勇介、圭、杉村、中山の四人が集まった。今、勇介のまわりは何かが変り始めていた。


 『野性の証明』で鮮烈デビューを果たした薬師丸ひろ子待望の主演二作目は、週刊少年マガジンで連載され大ヒットした柳沢きみおの人気コミックの映画化だった。デビュー作が荒唐無稽なアクション映画だったのに対し、本作で挑んだのは、不動産屋の手違いで同級生の男の子とひとつ屋根の下で同棲生活を送るハメになった今どきの女子高生・山葉圭役。前作のような記憶喪失に陥ったデフォルメされたキャラクターと異なり、今回の役柄は等身大の女の子…しかも人気コミックのヒロインという認知度の高いキャラクターという事もあって演じる上でのハードルはかなり高かっただろう。更に併映作品が当初予定されていた山口百恵の引退記念作品『古都』から『まことちゃん』に変わった事から、その夏の成果は殆ど『翔んだカップル』に委ねられ薬師丸ひろ子の実力が試される興行になった。結果として関係者の予想を上回る配給収入8億円というヒットを記録したのだ。
 意中の女の子と図らずも同棲生活を送る男の子が強がりながらも、彼女の言動に嫉妬したり、仲直りしたり…そんな些細な事件(大人から見たら事件と呼べるシロモノではないとしても)を繰り返しながら、少しずつ距離を縮めていく。薬師丸ひろ子のアイドル性を相米慎二監督(これが監督デビュー作)は緩急自在の演出で、愛嬌たっぷりの中性的魅力を前面に打ち出す。作品全体に流れるイメージを映画評論家の北川れい子女史は「午前中のフルーツ・パーラー的清潔感」と表現していたが、まさに言い得て妙だと思った。『タッチ』の長澤まさみ然り、青春コミックのヒロインは性を感じさせてはならないのである。妄想を鎮めるためにヘッドヘッドホンで音楽をガンガン聴いている勇介の元に部屋を覗かれた!と駆け込んでくる薬師丸ひろ子を勇介の視線で手持ちカメラで捉えた映像や、喧嘩して雨降る夜中に飛び出した彼女を追いかける鶴見辰吾扮する勇介の背景でおぼろげに光る駅と信号の灯りで二人の揺れ動く心境を表わすなど、リリカルなカメラ演出で、恋愛には幼い男女の生理を描くのは相米監督ならでは。ブレーキの利かない壊れた自転車で彼女をゴミ箱に突っ込ませたりとか結構ムチャさせるなぁと思ったりしたものの、その後で地べたにへたばりながら、「自転車がぁ〜」と半ベソをかく演技に移る薬師丸ひろ子の姿にプロ根性が垣間見えグッとくるものを感じた。
 丸山昇一による脚本は、15歳の若い主人公たちの気持ちがセリフの中で踊るように表現されている。二人が言い争ったり、冗談を言い合ったりする会話の中にはキラキラしたトキメキにも似た思いが散りばめられ、笑いながら目頭が熱くなる。冒頭間もなく起こる最初の事件(まぁこれが物語の核となるわけだが)、間借り人が圭ちゃんと分かった途端、不動産屋に電話をする勇介を不安げに見つめる薬師丸ひろ子の所作を見て、「おっ、この数年で彼女に何があったのだ?」と思ったくらい演技が上達していたのに驚いた。そして受話器を奪い取ると堰を切ったように借主の権利をまくし立てる長回しの場面を演じ切ったのは見事だ。ボクシングの練習試合の後、クサっていた勇介を一方的に責めたてて何度も平手打ちする強さ、初体験する場面で見せる恥じらいの表情…などなど薬師丸ひろ子の魅力が溢れた美味しい逸品である。

「言いなさいよ、もっと言いなさいよ!消化不良、栄養不良、成長不良!」と、鶴見辰吾を平手打ちしながら怒鳴る薬師丸ひろ子の可愛らしさ。


レーベル: (株)ポニーキャニオン
販売元: (株)ポニーキャニオン
メーカー品番:PCBA-50056 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 4,104円 (税込)

昭和53年(1978)
野性の証明

昭和54年(1979)
戦国自衛隊

昭和55年(1980)
地球へ…
翔んだカップル

昭和56年(1981)
ねらわれた学園
セーラー服と機関銃
セーラー服と機関銃(完璧版)

昭和57年(1982)
装いの街

昭和58年(1983)
探偵物語
里見八犬伝

昭和59年(1984)
Wの悲劇
メイン・テーマ

昭和60年(1985)
野蛮人のように

昭和61年(1986)
キャバレー
紳士同盟

昭和63年(1988)
ダウンタウンヒーローズ

平成1年(1989)
レディ!レディ!

平成2年(1990)
タスマニア物語
病院へ行こう

平成4年(1992)
きらきらひかる

平成5年(1993)
ナースコール

平成9年(1997)
マグニチュード
 明日への架け橋

平成15年(2003)
木更津キャッツアイ
 日本シリーズ

平成16年(2004)
オペレッタ狸御殿
レイクサイド マーダーケース
鉄人28号

平成17年(2005)
ALWAYS 三丁目の夕日
あおげば尊し

平成18年(2006)
木更津キャッツアイ
 ワールドシリーズ
バブルへGO!タイムマシンはドラム式
ありがとう

平成19年(2007)
ALWAYS 続三丁目の夕日
うた魂
めがね

平成21年(2009)
ヘブンズ・ドア
今度は愛妻家

平成22年(2010)
わさお
ハナミズキ

平成24年(2012)
ALWAYS 三丁目の夕日'64



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