探偵物語
尾行ひとつ満足にできないのかしら、ドジ探偵さん

1983年 カラー ビスタサイズ 111min 東映
製作 角川春樹 プロデューサー 黒澤満、長谷川安弘、紫垣達郎 監督 根岸吉太郎 脚本 鎌田敏夫
原作 赤川次郎 撮影 仙元誠三 美術 徳田博 音楽 加藤和彦 主題歌 薬師丸ひろ子 録音 橋本文雄
照明 渡辺三雄 編集 鈴木晄
出演 薬師丸ひろ子、松田優作、秋川リサ、岸田今日子、北詰友樹、坂上味和、ストロング金剛
南雲勇助、榎木兵衛、中村晃子、鹿内孝、荒井注、蟹江敬三、財津一郎、三谷昇、山西道広
清水昭博、林家木久蔵、藤田進、加藤善博、草薙良一、清水宏、檀喧太


 前作『セーラー服と機関銃』が公開されて間もなく、突然の休業宣言以来、1年半ぶりに復帰した第一回作品。赤川次郎が薬師丸ひろ子のために書き下ろしたユーモアミステリーだ。既に百万部を突破したベストセラーとなっているが、映画化にあたっては、人間関係に更なるひねりを加え、真犯人も原作と同じとは限らない…という二転三転のスリリングな結末が用意されている。監督には『狂った果実』や『遠雷』等で、ブルーリボン賞をはじめ映画各賞に輝き、日本映画に新しい風を起こしている根岸吉太郎。根岸監督のリアリティーを重視する演出方法で、等身大の薬師丸ひろ子が描かれている。脚本はトレンディドラマの名作を生み出してきた鎌田敏夫、撮影は『セーラー服と機関銃』で見事な長廻しを見せてくれた仙元誠三がそれぞれ担当している。この映画のためにショートボブ・ヘアにばっさり髪を切った薬師丸の相手役の探偵には「野獣死すべし』『家族ゲーム』といった幅広いジャンルで活躍する松田優作を迎え、映画のスケールを更に大きくしている。他にも岸田今日子、蟹江敬三、財津一郎といった個性的な俳優陣が脇を固めているのも注目を集めている。


 新井直美(薬師丸ひろ子)は19才の女子大生。いたずらっ子がそのまま大きくなったみたいな行動派だ。一週間後には、父親の待つアメリカに旅立つことになっている。そんなある日、直美は所属しているサークルの先輩に誘われ、ペンダントをプレゼントされた。いつしかホテルの一室にいた二人の元に突然、直美の伯父と名乗る男が飛び込んで永井を追い出してしまう。この男・辻山秀一(松田優作)は私立探偵で、父の元秘書から彼女のボディー・ガードに雇われたのだった。ある日、辻山の別れた妻・幸子(秋川リサ)と、愛人関係にあった岡崎組の跡取りがホテルのシャワー室で何者かに刺殺される事件が起きる。辻山のアパートに飛び込んで来た幸子は身の潔白を主張するが、ホテルは密室状態で犯行のチャンスがあったのは幸子だけと、警察、国崎組は幸子を犯人として探しまわっていた。直美は幸子をかくまい辻山と二人で真犯人を見つけようと言い出す。殺された跡取りの葬儀に出かけた直美は未亡人の三千代と国崎組の岡野が一緒に出かけるのを見つけた。直美は、ひょんな事から訪れたホテルが殺人現場である事を知り、シャワー室の天井が換気孔になっているのを発見する。直美の証言で皆でホテルに向い、そこで換気孔から隣の部屋へと移動を行った直美は、通路でペンダントを発見した。それは永井が海で買い、以前、直美が辻山と入った和也が経営している店で、バニーガールとして働いていた永井の恋人・正子がしていたものだった。次の日、問いつめた直美に正子は告白を始めた。正子は永井のために、あの店で売春もしており、そして、妊娠している彼女に無理やり客をとらせる岡崎組を憎み、激情的に跡取りを殺害したのだった。渡米の日、空港で直美を待ちうけていた辻山と別れの熱いキスを交わし、直美は旅立って行った。


 『セーラー服と機関銃』公開後、大学受験のために1年半の休業宣言をした薬師丸ひろ子の復帰一作目となる本作は、彼女が演じる事を想定して赤川次郎が書き下ろしたライトなサスペンスコメディだ。(併映が原田知世のデビュー作『時をかける少女』で、贅沢過ぎるダブル角川アイドル映画二本立てだった)主演四作目ながら松田優作を相手に堂々と主演女優としての役目を果たしているのは大したものだ。驚くのは休業期間中、女優活動をしていなかったにも関わらず演技力に更なる磨きがかかった事。当初、本人は主人公の直美に共感出来なかったと語っていたが、80年代の若者に流れていたハッキリと意思表示をしない捉えどころの無さを見事に体現していた。世の中の価値観も70年代とは異なり、バブル直前の女子大生ブームなるものが巻き起ころうとしていた時代の一片を根岸吉太郎監督は瑞々しく切り取っている。根岸監督は『キャバレー日記』(後期日活ロマン併映ポルノの傑作である)、『俺っちのウェディング』に続く冗談三部作の最終章として本作を位置付けており、アメリカ映画を意識したエンタテインメント精神に溢れた作品作りを意識したそうだ。『なんとなく、クリスタル』以降、ブランド志向が高まる若者文化を象徴するようなウィットに富んだ演出で、ちょっとしたご馳走に出会った気分を味わえた。
 大人と子供の狭間を行ったり来たりしている微妙な年ごろのお嬢様がオジサン探偵と知り合ったために今までの人生で体験しなかった事件に遭遇する事となる。裕福な女子大生と探偵…という取り合わせは、赤川次郎お得意のウェルメイドなサスペンスだが、“男女7人夏物語”など数多くのトレンディドラマを手掛けた鎌田敏夫の脚本によって、二人の間に交わされるちょっとしたロマンスを塗しながら、気軽に楽しめる洒落た小品に仕上がっていた。(最初、書かれた短編は大きな事件は起こらない二人の関係にフォーカスしていたが映画化にあたりドラマ性のある長編に作り直したらしい)何者かから依頼されて直美のガードをしていた探偵の前妻が殺人事件の容疑者となる中盤から薬師丸ひろ子の演技は控え目なお嬢様から行動派の女の子に変貌する…これが上手い。息子を殺されたヤクザの親分が送った組員たちからアパートの窓づたいに逃げようとする彼女が宙ぶらりんになる姿は最高だ。
 そこで重要なのは、やはり松田優作の存在感だろう。既にハードボイルド路線で東映=角川の顔だった彼がキッチリ薬師丸ひろ子の演技を受け止めて、『家族ゲーム』やTVの“探偵物語”で見せる独特の間を持つトボけた雰囲気で世間一般でイメージされていたアイドル映画とは一線を画していた。前作『セーラー服と機関銃』の渡瀬恒彦扮する組員もそうだったが本作の松田優作扮する探偵もストイックに自分の部をわきまえる姿勢を固辞するのが好感が持てるんだろうな…と思った。むしろ探偵の揺れ動く感情は前妻に向けられ、二人が抱き合う様子を部屋のドア越しに聞いてしまった直美が自暴自棄に陥り、行きずりの男とホテルに入ってしまう薬師丸ひろ子の演技に妙な艶かしさを感じてしまった。それだけに、事件も解決して成田空港で二人が別れるラストでのキスシーンは無い方が良かった…と思うのは私だけだろうか。

「本当に愛してる?」かつて自分の父と関係があった秘書に尋ねる直美にこう答える。「愛なんて…そんな。言うと減りますから」演じる岸田今日子がイイ。


レーベル:角川映画(株)
販売元: 角川映画(株)
メーカー品番:DABA-647 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 2,057円 (税込)

昭和53年(1978)
野性の証明

昭和54年(1979)
戦国自衛隊

昭和55年(1980)
地球へ…
翔んだカップル

昭和56年(1981)
ねらわれた学園
セーラー服と機関銃
セーラー服と機関銃(完璧版)

昭和57年(1982)
装いの街

昭和58年(1983)
探偵物語
里見八犬伝

昭和59年(1984)
Wの悲劇
メイン・テーマ

昭和60年(1985)
野蛮人のように

昭和61年(1986)
キャバレー
紳士同盟

昭和63年(1988)
ダウンタウンヒーローズ

平成1年(1989)
レディ!レディ!

平成2年(1990)
タスマニア物語
病院へ行こう

平成4年(1992)
きらきらひかる

平成5年(1993)
ナースコール

平成9年(1997)
マグニチュード
 明日への架け橋

平成15年(2003)
木更津キャッツアイ
 日本シリーズ

平成16年(2004)
オペレッタ狸御殿
レイクサイド マーダーケース
鉄人28号

平成17年(2005)
ALWAYS 三丁目の夕日
あおげば尊し

平成18年(2006)
木更津キャッツアイ
 ワールドシリーズ
バブルへGO!タイムマシンはドラム式
ありがとう

平成19年(2007)
ALWAYS 続三丁目の夕日
うた魂
めがね

平成21年(2009)
ヘブンズ・ドア
今度は愛妻家

平成22年(2010)
わさお
ハナミズキ

平成24年(2012)
ALWAYS 三丁目の夕日'64



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