きらきらひかる
自分の気持ちに素直に生きる

1992年 カラー ビスタサイズ 103min ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画
製作 村上光一 プロデューサー 河井真也、梅川治男 監督、脚本 松岡錠司 企画 堀口壽一
原作 江國香織 撮影 笠松則通 美術 遠藤光男 録音 菊地進平 照明 水野研一 編集 岸眞理
出演 薬師丸ひろ子、豊川悦司、筒井道隆、大島智子、関口めぐみ、阿藤海、川津祐介
岩本多代、加賀まりこ、津川雅彦、柴田理恵、土屋久美子


 『バタアシ金魚』でデビューし、新人らしからぬ演出力で高い評価を得た松岡錠司監督による二作目。原作は、“草之丞の話”で毎日新聞花いちもんめ童話大賞を、そして“409ラドクリフ”でフェミな賞を受賞した江國香織の同名小説。若い女性を中心に絶大なる支持を集め第2回紫式部文学賞を受賞し、ベストセラーとなった。『バタアシ金魚』『どついたるねん』等を手掛けた名カメラマン笠松則通が撮影を担当している他、平均年齢30歳という若手実力派スタッフが集結している。イメージソングを女性に圧倒的な人気を誇るPSY-Sが歌っているのも大きな話題となった。主演の笑子には『病院へ行こう』で久しぶりの映画復帰を果たし、映画女優としての新境地を開く薬師丸ひろ子が扮し、彼女の夫睦月には『12人の優しい日本人』等で存在感のある演技を見せる豊川悦司。そして彼と同性愛関係にある紺には、『バタアシ金魚』で松岡監督と組んだ筒井道隆が再びキャスティングされる等、それぞれが難しい役どころに挑戦している。


  フリーの翻訳家・香山笑子(薬師丸ひろ子)は親の勧めで30歳の医師・岸田睦月(豊川悦司)と見合いをしていた。情緒不安定でアルコール依存症の笑子に対して、睦月は同性愛者だった。それを納得して結婚する2人だったが、新婚生活がしばらく過ぎた頃、笑子は睦月の恋人・藤島紺(筒井道隆)に接触しようとする。最初は嫌悪感を出していた紺だったが、ある日、睦月が帰宅すると紺が家に来ていた。いつしか3人の間には、友情とも愛情ともつかぬ不思議な関係が出来上がっていた。睦月は笑子を好きになっていたが、彼女を抱くことはできず、彼女の親友・瑞穂に笑子に恋人を紹介してやってほしいと頼み込む。やがて笑子の両親にも、睦月が同性愛者であることがバレて離婚騒ぎになる。笑子は睦月と別れないためにも、人口受精で子供を作ることを考えるが、睦月はそれに反対する。笑子と紺を乗せて車を走らせる睦月だったが、帰りの車中で煮え切らない睦月の態度に笑子は怒って、ひとり車を降りて夜の闇の中に走り去る。「あんたは人を愛することを知っている男だと思っていた」と睦月を責める紺。明け方…倒れるまで走り続けた笑子の前に、追いかけてきた睦月と紺の優しい笑顔があった


 無表情でカメラを見据える薬師丸ひろ子のアップからこの映画は始まる。久しぶりに見る薬師丸ひろ子は、ショートボブのヘアスタイル(『探偵物語』以来か?)に大きなゴールドのイヤリング、そして清楚なベージュの服装という、当時の流行りを無難に取り入れたステレオタイプのお嬢様って感じ。ただ、本作の主人公・笑子は今まで彼女が演じてきたキャラとは異なる雰囲気で、正直、お付き合いするには、ちょっと面倒臭そうなタイプである事が表情から何となくうかがえる。案の定、そこは心療内科の診察室。情緒不安定であるが故にアルコール依存症となった彼女の治療も終わり、医者は付き添いの母に言う。「後は、いい人でも見つける事かな?情緒不安定は結婚でもすれば治りますよ」はぁっ?口には出さないが軽蔑の眼差しを投げかけ、ガマンしていたガムをおもむろに噛みだす仕草で彼女の心境がよく分かる。前作『病院へ行こう』から2年…28歳になった薬師丸ひろ子が実にイイ味を出している。しかも上映館はシネスイッチ銀座…薬師丸ひろ子の映画もいよいよミニシアターで上映される時代となったか…等と妙に感心したものだ。
 「トーキー映画は何を生み出したか?それは沈黙である」フランスの映画監督ロベール・ブレッソンが書いた本の中に書かれた一節だ。松岡錠司監督は映画を撮る前に必ずその本を読むという(本作のパンフレットでもその言葉を引用している)。正に本作はセリフとセリフの間に生まれる沈黙が美しく光を帯びている映画だと思った。勿論、それは前作の『バタアシ金魚』でも感じたが、江國香織の小説に出てくる主人公たちが持っている心のどこかにあるモヤモヤをその沈黙が見事に表現している事に感服させられた。松岡監督の映画は透明感のある柔らかい光が印象的だが、その明るさが逆に心の奥底にある闇を浮き上がらせる。本作の主人公たち…アルコール依存症の妻、同性愛者の夫、そして夫の恋人という奇妙な三角関係が、あまりにも白昼堂々アッケラカンと描かれる分、主人公たちの孤独感がハッキリと見えてくる。笠松則通カメラマンのひんやりとした無機質で生活感の無い画作りが素晴らしい。印象的な場面がある。親から勧められたお見合いの席で豊川悦司演じる見合い相手の睦月に向かって「笑ったなぁ?」と、食ってかかるところだ。沈黙を打ち破る彼女の言葉、そして窓の外には新緑の木々…この画面構成のセンス、さすがである。(松岡監督と笠松カメラマンは溝口健二監督のカメラを意識して、被写体との距離感にかなり気を使ったという…納得)
 原作と少しだけ変えているエンディングも映像的な表現として効果的で、カット割りも実にバランスが取れていて清々しい気持ちになった。別れ話を持ち出した睦月の車から真夜中の街へと飛び出した笑子を「追わなくていいのか?」と問い詰める紺。明け方、笑子を追い掛けてきた睦月と紺のアップが交互に映し出され、最後は薬師丸ひろ子の満面の笑み(ファーストカットと対照的)で終わる。注目したのは敢えて三人を同一のフレームに収めなかったという心憎い演出だ。三人が見せる笑顔から、また新しい生活が始まるんだろうな…と予想出来るものの、ここで三人が再会したロングのビジュアルを差し込むと予定調和のラストっぽくなってしまったであろう。そして、バックに流れる“大きな古時計”に思わず泣けた。

「生きてくって事が幸せってもんよ…」主人公がよく行くファミレスのウエイトレス(土屋久美子がイイ味を出している)が言うセリフ。何でウエイトレスが、こんな格言を?


レーベル:(株)ポニーキャニオン
販売元: (株)ポニーキャニオン
メーカー品番: PCBC-50564 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 3,462円 (税込)

昭和53年(1978)
野性の証明

昭和54年(1979)
戦国自衛隊

昭和55年(1980)
地球へ…
翔んだカップル

昭和56年(1981)
ねらわれた学園
セーラー服と機関銃
セーラー服と機関銃(完璧版)

昭和57年(1982)
装いの街

昭和58年(1983)
探偵物語
里見八犬伝

昭和59年(1984)
Wの悲劇
メイン・テーマ

昭和60年(1985)
野蛮人のように

昭和61年(1986)
キャバレー
紳士同盟

昭和63年(1988)
ダウンタウンヒーローズ

平成1年(1989)
レディ!レディ!

平成2年(1990)
タスマニア物語
病院へ行こう

平成4年(1992)
きらきらひかる

平成5年(1993)
ナースコール

平成9年(1997)
マグニチュード
 明日への架け橋

平成15年(2003)
木更津キャッツアイ
 日本シリーズ

平成16年(2004)
オペレッタ狸御殿
レイクサイド マーダーケース
鉄人28号

平成17年(2005)
ALWAYS 三丁目の夕日
あおげば尊し

平成18年(2006)
木更津キャッツアイ
 ワールドシリーズ
バブルへGO!タイムマシンはドラム式
ありがとう

平成19年(2007)
ALWAYS 続三丁目の夕日
うた魂
めがね

平成21年(2009)
ヘブンズ・ドア
今度は愛妻家

平成22年(2010)
わさお
ハナミズキ

平成24年(2012)
ALWAYS 三丁目の夕日'64



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