織田作之助の同名小説を豊田四郎監督が森繁久彌と淡島千景主演で描いた日本映画屈指の名作『夫婦善哉』の舞台となった大阪の下町ミナミ界隈。道頓堀から道具屋筋を千日前に向かって歩くと右手にひっそりと見える路地がある。“法善寺横丁”と書かれた看板をくぐると石畳の路地の両側に小料理屋バー等が軒を連ねている。明るいうちから暖簾を出している一杯飲み屋やカウンターしかない食事処が肩を寄せ合って商売しているその奥に商売の神様『法善寺』が佇んでいる。

 水掛不動尊と言われるだけに水商売にご利益があるとされ、濃緑のコケに覆われている石の水掛不動尊には近隣で水商売を営むママさんが木の柄杓で水を掛け、手を合わせる光景がよく見受けられる。法善寺は一日中線香の煙がただよい、ミナミでは「水かけ不動さん」の名で親しまれている不動明王は、浪花情緒を満喫出来る場所だ。また毎月28日には水掛不動明王護摩法要が行われている。



 横丁入り口に架かる看板の文字は西が藤山寛美、東は3代目桂春団治のものであり、大阪を愛した両氏の思いが込められている。また小料理屋「正弁丹吾亭」の前に「行き暮れてここが思案の善哉かな」の織田作之助の碑がある。“法善寺横丁”は道頓堀と並び、数多くの昭和歌謡史に残される場所なのだ。

 専念法師が寛永14年に建てた『法善寺』は阿弥陀如来を本尊に持つ浄土宗のお寺だ。昭和20年3月13日の大阪大空襲で、六堂伽藍が焼失するもののお不動さんだけが焼けずに残り現在に至っている。

 浄土宗天龍山法善寺の境内の露店から発展し、明治から昭和の初期にかけては寄席の紅梅亭と金沢亭が全盛で、落語を楽しむ人々で賑った法善寺横丁は『夫婦善哉』でも当時の風習が描かれている。映画のラストで、父の葬儀には参列した柳吉と蝶子が法善寺境内の「めおとぜんざい」へ行き、ぜんざいを食すシーンは有名。雪の散らつく中、法善寺横丁を肩寄せ合って歩く二人が『法善寺』に軽く手を合わせるシーンは何とも温かみのある美しいシーンだった。現在でも法善寺にお参りし、斜向いのぜんざいやに入る観光客が多い。また柳吉と喧嘩をした蝶子がライスカレーを食べる“せんば自由軒”も近所の灘波に本店を構えており、是非一度名物カレーを味わっていただきたい。

法善寺
■大阪市中央区難波1-2-16


発売:東宝 http://www.toho.co.jp/
TDV15060D 片面2層 主音声:Dolby Digital [4:3] スタンダードサイズ
映像特典:見どころ解説(林家こぶ平)

税込4,725円
 


日本映画劇場とは看板絵ギャラリーお近づきに…

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