うた魂♪
“合唱”ってスゴイ!きっとあなたも歌いだす、感動のハーモニー!!

2007年 カラー ビスタサイズ 120min 日活
プロデューサー 馬場清 監督、脚本 田中誠 脚本 栗原裕光 撮影 鈴木一博 美術 新田隆之 
編集 大永昌弘 音楽 林祐介、和田亨 録音 岩倉雅之 装飾 松田光畝 主題歌 ゴスペラーズ
出演 夏帆、ゴリ(ガレッジセール)、薬師丸ひろ子、石黒英雄、徳永えり、亜希子、岩田さゆり
利重剛、中村久美、ともさかりえ、間寛平、ゴスペラーズ、加勢大周、田中要次、山中崇、草薙幸二郎


 ちょっと自意識過剰なヒロインかすみをキュートかつコミカルに、そして伸びやかな歌声も披露しながら演じるのは、映画、ドラマ、CMと出演作品が続き『天然コケッコー』の評価も高い最も話題の正統派美少女女優・夏帆。かすみに「歌とは何か」を熱く教える、とびっきりスピリチュアルな湯の川ヤンキー合唱部の部長・権藤洋には、人気お笑いタレントのゴリ(ガレッジセール)。合唱部の顧問・瀬沼裕子役に、『ALWAYS 三丁目の夕日』で第29回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞し、透き通った歌声を持つ薬師丸ひろ子。さらに、石黒英雄、徳永えり、亜希子、岩田さゆり、ともさかりえ、間寛平、役者として映画初出演を果たしたゴスペラーズなど、個性豊かなキャストが集結。函館港イルミナシオン映画祭第8回シナリオ大賞に輝いたストーリーを、『タナカヒロシのすべて』の田中誠監督が鮮やかに瑞々しく演出し、笑いと感動でいっぱいのドラマを作り上げた。また、本作のもうひとつの見所は、なんといっても魂のこもった“歌”のシーンの数々。クラシックからポップスまで、バリエーション豊かな楽曲を、合唱バージョンで披露。かすみが所属する七浜高校合唱部が、名曲「待ちぼうけ」、MONGOL800の大ヒット曲「あなたに」、そして本作のためにゴスペラーズが書き下ろした主題歌「青い鳥」などを、すがすがしい歌声で響かせるかと思えば、その良きライバルとなる湯の川学院高校のヤンキー部員たちは、尾崎豊の名曲「15の夜」、「僕が僕であるために」をハートに伝わる迫力で歌い上げる。そして、同じく尾崎豊の「oh my little girl」を歌うのは天使の歌声の持ち主・薬師丸ひろ子。合唱部員を演じるオーディションを経て選び抜かれた役者たちは、クランクイン前から猛特訓を続け、合唱に必要なリアルな“団結力”で撮影に臨んでいる。


※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
 北海道の小さな町にある七浜高校合唱部のソプラノパートリーダー・荻野かすみ(夏帆)は、自分の歌声とルックスに異常なまでの自信を持つ女の子。ある日、写真が趣味のイケメン生徒会長・牧村純一(石黒英雄)から、「歌っている荻野さんが撮りたい!」とモデルを頼まれて、有頂天になるのだが…。上がってきた写真は、目を見開き、口を大きく開けた、インパクトたっぷりの顔ばかり。自分の歌っている表情に驚愕するかすみは、牧村から「産卵中のシャケみたいな顔」と言われて自信喪失してしまう。遂には、合唱部顧問の産休代員・瀬沼裕子先生(薬師丸ひろ子)に夏祭りの合唱祭を最後に退部すると申し出る。合唱祭当日ステージに上がっても下を向いてばかりのかすみの前に突如現れた番長・権藤洋(ガレッジセール・ゴリ)が率いる、湯の川学院高校のヤンキー合唱団。おびえるかすみに、ヤンキーたちは「負ける気がぜんぜんしねえ!」と宣戦布告。さらに権藤はかすみに「さっき歌ってるとこ見たけど、あんな歌い方、歌への冒涜だ」と指摘する。その後、湯の川学院が力強く歌う尾崎豊の“15の夜”を聴いて、かすみは「すごい! 歌ってあんなに感情が伝わってくるものなんだ」と大感激。権藤に、叱咤激励されたかすみは、つい忘れかけていた歌への自分の素直な思いに気付く。「歌いたい、あたしは歌いたいんだ!」。地区予選当日。かすみの変化が、七浜合唱部の仲間とそのステージを包み込み、素敵な歌の奇跡を巻き起こそうとしていた。


 上手い!何度膝を叩いたことだろうか。夏帆演じる主人公・かすみは、“恋に恋する自分大好き自意識過剰なメルヘン少女”で、周囲が辟易するようなベタな妄想とライトノベル感覚の学園コメディ全開の演出(わざと軽薄な感じにしている?)で冒頭の20分は構成されている。この先どうなることか展開が全く読めず不安に思っていたのだが…ところが、毎回全国大会に出場する名門コーラス部に所属するかすみが、「歌っている表情が産卵中の鮭に似ている」なんて意中の彼に言われてから、作品のトーンがガラリと一転する。歌っている自分が笑われていたのだと、多感な女子高生が気づいたものだからすっかり自信を喪失してしまう中盤以降…。かすみは不良高校“湯の川学院”の落ちこぼれ生徒で構成されたコーラス部(ガレッジセールのゴリが不良たちを束ねるコーラス部の部長を熱く演じており、常々演技は上手いと思っていたが本作で最高の演技を披露する)と出会い、彼らが心の底から歌う尾崎豊の“15の夜”に感銘を受けるあたりから実に気持ち良いテンポで物語が展開していく。いきなり中盤から、彼らの歌う力強い“15の夜”に感動させられ、それから随所に嬉しくなるようなエピソードを散りばめているものだから、その度に涙腺が緩みラストまで突き進む。
 だから、印象に残る場面も多い。コーラス部に復帰した主人公が、一番下っぱの譜面めくりから再スタートするのだが、その時初めてコーラスの楽しさやチームワークの大切さを理解した時、親友のピアノ奏者が「あなたの立つ場所はここじゃないよ…」と本来、主人公がいたパートへ促すシーンだ。その親友を演じた野村ミズキは『フラガール』でも主人公を暖かく見守る優しい女の子を好演していたが、本作でも控え目ながらも存在感溢れる演技を披露してくれた。印象に残るシーンは、まだある。何気ないシーンだが、喫茶店でエノケンのレコードをリクエストした老人のために傷ついて途切れてしまった曲の続きをそこに居合わせた彼女たちが歌ってあげるシーンだったり、不良たちが髪型と服装(このコーラスは髪を染めたりリーゼント姿だったり、服装は長ラン&Tシャツとモロ不良の出で立ちだがこれはこれで有りじゃないかな?と思う)で大会に参加できなくなりかけた時、かすみが、かつて彼らに言われたセリフで逆に窘めるシーンだったり…。観客が求めている行動やセリフを絶妙なタイミングで出してくれるのだ。クライマックスは、勿論、全国大会の地区予選。今までタクトを振ったことのない産休代行教師(薬師丸ひろ子演じる役には意外な過去があったりして…相変わらず飄々とした演技が上手い)の指揮の下、歌う“あなたに”が圧巻。…と、これで最後と思いきや、もっと素晴らしいクライマックスが用意されているのには、ただただ…参った!(これは、映画をご覧になってください。音楽までは、文字で語り尽くせません)それにしても、主人公を演じた夏帆の絶妙な三枚目演技には、感服してしまう。前作『天然コケッコー』の演技に引き続き、天才的な演技は、偶然の産物ではない本物の実力であることをここで証明して見せた。

「必死になってる顔に疑問を持っていたら、一生ダセエまんまだ!」歌っている自分の顔に自信が無くなったかすみに権藤が言うセリフ。何かに熱中している時の顔って、たいがいヘンな顔なのだ。

【田中 誠監督作品】

平成16年(2004)
タナカヒロシのすべて

平成18年(2006)
おばちゃんチップス
雨の町

平成19年(2007)
うた魂♪

平成20年(2008)
コラソン de メロン

平成23年(2011)
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら



日本映画劇場とは看板絵ギャラリーお近づきに…

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