時をかける少女
母の想いを遂げるために1972年へタイム・リープ!…するはずが、間違えて1974年に。どうする!?あたし!!

2010年 カラー ビスタサイズ 122min 『時をかける少女』製作委員会
企画 劔重徹、高木政臣 監督 谷口正晃 脚本 菅野友恵 原作 筒井康隆 撮影 上野彰吾
美術 舩木愛子 音楽 村山達哉 照明 赤津淳一 VFXプロデューサー 小坂一順 録音 小川武
出演 仲里依紗、中尾明慶、安田成美、石丸幹二、青木崇高、石橋杏奈、勝村政信、
千代將太、柄本時生、キタキマユ、松下優也


 これまで日本映画を代表する錚々たる監督のもとで助監督を務めた谷口正晃の長編映画初監督作品。最先端の撮影機材やVFX技術によるタイム・リープや70年代の町並みを情緒豊かに再現すると同時に、その確かな映像センスを遺憾なく発揮している。幾度となく映像化されてきた名作小説というプレッシャーをもろともせず、原作を知らない世代の心にも強く響く、良質の青春映画に仕上げている。さらに、1983年版で原田知世が歌い社会現象までになった主題歌「時をかける少女」を人気のユニット、いきものがかりがカバーしている。主人公・芳山あかりを演じるのは『純喫茶磯辺』やアニメーション版『時をかける少女』で主人公の声を担当し大絶賛された若手演技派女優、仲里依紗。時代が移り変わるように、彼女が演じるあかりは、まさに2010年版“時をかける少女”といえる。そして、彼女が恋に落ちる青年・涼太を演じるのは、『ROOKIES-卒業』の中尾明慶。また、安田成美が薬学者である母・和子を演じている。物語のキーパーソンである深町一夫には、絶大な人気を誇る元劇団四季の看板俳優・石丸幹二が映画初出演を果たしているほか、勝村政信、青木崇高、石橋杏奈など、個性派キャストが集結し、新たな実写版『時をかける少女』を彩っている。


※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
 交通事故に遭い昏睡状態に陥った母・和子(安田成美)は娘のあかり(仲里依紗)に、「1972年4月の土曜日。深町一夫に会うため、中学の理科室に行かなくては」と、うわごとのように告げる。かつて未来人の深町と恋に落ちた和子は、研究室でタイムワープの薬を開発していたのだ。あかりは、再び昏睡状態に陥った和子の代わりに、土曜日の実験室にタイム・リープするのだった。しかし、無事に土曜日の実験室にやってきたと思ったら、1972年4月の世田谷西中学校実験室ではなく、2年後の1974年2月の昭徳大学にタイム・リープしてしまい、そこで溝呂木涼太(中尾明慶)という大学生と知り合う。映画監督志望の涼太を自分が未来から来た人間であることを納得させたあかりは、一緒に深町一夫探しを開始。中学を卒業し、横浜にある高校に進学していた母・和子を発見するものの、すでに彼女の記憶から深町の存在は消されていた。四畳半一間のボロ・アパートに同居し、映画製作を手伝ううちに、あかりは涼太に恋心を抱き始めていた。3月2日、中学の理科実験室で待つあかりの目の前に、深町一夫(石丸幹二)が現れる。使命を終えたあかりは、深町に「最後に涼太に会って別れを告げたい」と頼むのだが、涼太が帰省のために乗り込もうとしていたバスは転落事故を起こす運命にあった。その事を教えようとバスターミナルに走るあかりだったが…。


 大林宣彦版『時をかける少女』の正当な続編(年代としてはTV版“タイムトラベラー”?)である本作はタイトルバックにユーミンの主題歌をいきものがかりがカバー。前作のエンディングで原田知世の歌で終わっていた事を受けての続きである事が理解出来る。未来人・深町と恋に落ちて、その激しい想いは記憶を消されたにも関わらず36年の時を経て、再び芳山和子(安田成美も良いのだが、今の原田知世に願わくば演じてもらいたかった)の心に蘇るところから物語は本題へと展開する。2010年版の本作で和子の娘・あかりを演じた仲里依紗は細田守監督のアニメ版でも主人公・真琴(声)を好演していた若手ナンバーワンの実力者だ。交通事故で意識不明となった母が唯一、残したメッセージを過去に戻って伝えるために、あかりが母に代わってタイムリープを行う。この時空を超えるイメージが素晴らしく、あかりが無数に並ぶ数字の上を走る側から崩れ落ちて行くシュールな映像は見事だ。
 今まで作られてきた『時をかける少女』は少女マンガ的な“不変の愛”がテーマという印象が強かったが、本作は“運命に購えぬ時”が後半、大きなテーマとなる。偶然かも知れないが、大林監督がセルフリメイクした『転校生 さよならあなた』で“避けられぬ死”を体が入れ替わった主人公たちが享受したように、本作ではタイムリープした主人公しか知らない先の運命(ある人物が死ぬ運命にある事)を変える事が出来ず“愛する人の死”を享受する姿を描いていたのが興味深い。大林版との決定的な違いは、時間に対するシビアな考え方だ。イタズラに自分の都合で時間をいじくり回したアニメ版から学んだかのように未来人は、運命を変える事を許さない。本作に至るまでテレビ版を含め8本の『時をかける少女』が作られてきたが、一貫してパラレルワールドが生じるような時間のいじり方をしていないのは筒井康隆が守り通している“時間に対するルール”なのだろう。
 本作が劇場長編初監督作品となる谷口正晃は、随所に伏線を張り巡らし、無駄の無い丁寧な作り方をしているところに好感がもてる。単なるSF小説をなぞって映画化しているのではなく、あかりがタイムリープした昭和49年の生活臭がしっかりと再現されているのが良い。映画研究会で自主映画を撮っている中尾明慶演じる大学生の部屋なんか、リアルにその時代を体感していなければ出せないはず。このシーンひとつとっても、かなり研究したのが伺える。まるで、「大林監督だったら、こう撮るだろう」と思えるような映画青年ならではの小道具の使い方に、もしかしたら谷口監督は大林監督にある種のオマージュを捧げているのでは?例によって未来人の深町から記憶を消された(よく考えたら未来人って、自分で現在をかき乱して、勝手過ぎない?)あかりが、現代に戻ってポケットに入っていた8ミリフィルムを見て涙するシーンなどは映画青年だった人間ならばジーンと来るであろう。ただし…本当に欲を言えば、現代シーンではオリジナルキャストでやっていただきたかった事と、それが無理でも、せめて舞台は尾道と竹原で通していただきたかった。

「18才って、大人な響きだね」誕生日を間近に控えるあかりのセリフ。確かに、少女にとって成人式よりもリアルに大人を感じる年齢かも。

【仲里依紗 出演作】
フィルモグラフィー

平成18年(2006)
時をかける少女
渋谷区円山町

平成19年(2007)
ちーちゃんは悠久の向こう

平成20年(2008)
非女子図鑑
 死ねない女
ハルフウェイ
純喫茶磯辺
ガチ・ボーイ

平成21年(2009)
パンドラの匣
サマーウォーズ

平成22年(2010)
時をかける少女
ゼブラーマン2
 ゼブラシティの逆襲



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