武士道シックスティーン
性格も生き方も真逆の2人が、真剣にぶつかりあう青春剣道ストーリー

2010年 カラー ビスタサイズ 109min IMJエンタテインメント
監督、脚本 古厩智之 脚本 大野敏哉 原作 誉田哲也  撮影 清久素延
照明 川井稔 美術 須坂文昭 録音 渡辺真司 音楽 上田禎
出演 成海璃子、北乃きい、石黒英雄、荒井萌、山下リオ、高木古都、小木茂光
板尾創路、波瑠、古村比呂


 人気急上昇中の作家・誉田哲也による同名の原作は、発売されるやいなや、「一気読みせずにはいられない本」として、青春小説ファンと剣豪小説愛好家の両方から熱烈な支持を得た作品である。そんな剣道モノの新しいバイブルともいえる小説を、『ロボコン』『さよならみどりちゃん』『奈緒子』『ホームレス中学生』など、等身大の良質な青春映画を次々にヒットさせてきた古厩智之が完全映画化。本作では、主人公二人の揺れ動く関係をユーモアを交えて描くと同時に、これまでになく大胆かつ繊細に剣道の魅力を表現している。すべての世代が共感できて、前向きな気持ちになれる清々しい武士道エンターテインメントがここに誕生した。
 昼休みの友は「五輪書」と鉄アレイという孤高のサムライ女子高生・香織に『神童』『罪とか罰とか』『山形スクリーム』の成海璃子。とびきりの笑顔と天然パワーで香織を翻弄する早苗に『ハルフウェイ』『BANDAGEバンデイジ』の北乃きい。演技力、存在感ともに若手女優のトップを張る二人が、剣道着に身を包みスクリーンに清冽な風を吹き起こす。その他のキャストには、剣道部の顧問に堀部圭亮。剣道部員に荒井萌、山下リオ、高木古都らブレイク寸前の新進女優たち。香織のよき相談相手である兄に石黒英雄。その兄の元ライバルで剣道少女たちの憧れの的に賀来賢人。そして主人公二人の成長を影から見守るそれぞれの父親役に小木茂光、板尾創路の個性派が扮し、物語に絶妙な奥行きを与えている。


※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
 3歳から鍛錬を積んできた剣道エリートの磯山香織(成海璃子)は、とある大会で無名選手の不思議な足捌きに惑わされて負けたことが忘れられず、その選手を追って強豪校に入学する。しかし再会した因縁の敵・西荻早苗(北乃きい)は、ほぼ実績ゼロ、剣道は楽しむのがモットーのお気楽少女だった! 拍子抜けしながらも、己の敗因を突き止めたい一心で早苗の天性の力を引き出そうとする香織。一方、香織の気迫に最初はタジタジだった早苗も真剣勝負の面白さに目覚めていく。鋼と柔、対照的な二人は最高の好敵手になれるのか?


 今、日本映画界で次世代の若手俳優として注目されている二人の女優─成海璃子(18歳)と北乃きい(19歳)が剣を交える青春映画『武士道シックスティーン』。幼い頃より父親に剣の道を叩き込まれた成海と、取りあえず剣道をやっている緩い北乃の温度差が面白い。かつて『神童』でも天才ピアニストを演じ、天才的な演技力を見せつけた成美自身に本作の主人公・磯山香織がだぶって見える。その後、アイドル女優とは明らかに一線を画す方向性(『罪とか罰とか』なんて拍手を贈りたい程ぶっ飛んでいた)で、つき進んで来た成美が本作にたどり着いた…という印象を持つ。中学全日本チャンピオンであるギラついた主人公こそ、次のステージに立つ彼女に相応しい役だったのではないだろうか。対するもう一人の主人公・西荻早苗に扮する北乃は、『ハルフウェイ』を代表とする緩めのキャラ(『ラブファイト』の攻撃的なキャラですら緩さを魅力としていた)で、ずっと歩んできて本作でも彼女(いや…彼女じゃなくては出来ない)ならではの演技を披露している。まだ、この若さで「彼女じゃなければ…」という演技を完成させるのは凄い事だ。その二人の女優が火と水のような演技合戦を繰り広げるのだから、劇中の剣道の試合以上に熱い戦いだったと、言っても良いかも知れない。『ラブファイト』の回し蹴りも素晴らしかったが、今回の太刀さばきも流麗だった北乃の練習量はどれくらいだったのか…とにかく見事だ。
 冒頭、負けるはずのない相手─逃げるのだけは天下一品の女の子─に人生初の敗北を味わう成海の苦渋に満ちた顔アップから始まるのが上手い。古厩智之監督は最後まで手堅い演出で、二人の少女だけに焦点を当てている。ここが一番大事なポイントで、そこに下手な色恋沙汰や剣道の何たるか等の精神論を入れなかったおかげで一本筋の通った作品に仕上がったのだと思う。古厩監督は、原作で描かれている剣道に関わる登場人物を割愛して、二人の少女に時間を費やしたと語っていたが、これは大正解だったわけだ。また、防具の奥にある表情をキレイに浮かび上がらせる川井稔のライティング技術と清久素延のカメラがあったからこそ本作が成立した事を忘れてはならない。剣道の部活シーンも徹底したこだわりで、全員が竹刀を構えると演技とは思えない程、凜とした空気が伝わってくる。古厩監督の上手いのは、彼女たちが練習する体育館を通り抜ける風を感じられる画を作り上げているところだ。だから通常のスポコンものと違って汗を感じさせないのだ。あれだけ剣を極める事に執着する磯山と着実に腕を上げている西荻をいずれは対決させなくてはならないのに、敢えて非公式の空き地で勝負を決めさせる…という心憎い演出に脱帽。剣道は団体競技ではなくあくまでも一対一の個人戦であることを一貫しているところが本作の魅力であり、「負けるのは嫌だけど勝たなくてもいい」と現代の若者らしい言葉を口にしていた北乃が、次第に勝つ事に執着を見せ始める過程が気持ちいい。

「大事なのは勝か負けるかじゃない。好きか嫌いかだ」これは剣道を続ける事に迷う北乃きい演じる主人公に父が言うセリフだ。

【古厩智之 監督作】
フィルモグラフィー

平成7年(1995)
この窓は君のもの

平成11年(1999)
indies.B

平成15年(2003)
ロボコン

平成16年(2004)
さよならみどりちゃん

平成17年(2005)
それっきりだった
恋する梅干し
変型
原っぱ

平成19年(2007)
奈緒子

平成20年(2008)
ホームレス中学生

平成22年(2010)
武士道シックスティーン



日本映画劇場とは看板絵ギャラリーお近づきに…

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