桐島、部活やめるってよ
桐島に振り回される103分!!

2012年 カラー シネマスコープサイズ 103min ショウゲート配給
製作総指揮 宮崎洋 エグゼクティブプロデューサー 奥田誠治 監督、脚本 吉田大八 脚本 喜安浩平
原作 朝井リョウ 撮影 近藤龍人 美術 樫山智恵子 音楽 近藤達郎 主題歌 高橋優 照明 藤井勇
編集 日下部元孝 録音 矢野正人 衣裳 遠藤良樹
出演 神木隆之介、橋本愛、大後寿々花、東出昌大、清水くるみ、山本美月、松岡茉優、落合モトキ
浅香航大、前野朋哉、高橋周平、鈴木伸之、藤井武美、岩井秀人

(C)2012「桐島」映画部 (C)朝井リョウ/集英社


 第22回小説すばる新人賞受賞 ベストセラー小説映画化神木隆之介×吉田大八×朝井リョウ 新しい時代の青春最高傑作が誕生!原作は、大学在学中に第22回小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウのベストセラー小説。監督は、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で数々の賞を受賞した吉田大八。人間の持つダークな部分を赤裸々に描きながらも、愛おしくさえ思わせる人物描写は、まさに吉田監督の真骨頂。突然部活を辞めた「桐島」に振り回される周辺の人物に焦点をあて、不器用な登場人物の面白さや、見終わった後に希望を感じさせる人間ドラマはそのままに、自身初となる10代の群像劇に挑戦。同じシーンを様々な視点と、確信犯的に時間経過をズラして積み重ね、各キャラクターの想いを重層的に描き出している。観るものを、まるで本物の学校を覗き見しているようなリアルにして不穏な刺激に誘う、新しい“青春映画”が誕生した!キャストは、神木隆之介を主演に向かえ、今映画界が最も注目する女優・橋本愛ほか、600人を超えるオーディションから選抜されたフレッシュな才能が集結。閉塞された世界で生きる若者達の息づかいをリアルに体現する彼らの芝居は必見!


※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
 ありふれた時間が校舎に流れる、「金曜日」の放課後。バレー部のキャプテンで成績優秀、学校内の誰もが認める“スター”桐島が、部活を辞めるというニュースが校内を駆け巡った。桐島の恋人・梨紗(山本美月)でさえ彼と連絡が取れないまま、桐島と密接に関わっていた生徒たちはもちろん、ありとあらゆる生徒に波紋が広がっていく。人間関係が静かに変化し徐々に緊張感が高まっていく中、冷ややかにその状況を見つめるかすみ(橋本愛)。そして、桐島とは一番遠い存在だった映画部の前田(神木隆之介)は、いつもと同じように自主映画の撮影に没頭していた。しかし、翌週の「火曜日」、桐島が登校してきたという情報が校内を駆け巡り、バレー部、バトミントン部、帰宅部がそれぞれの思いを抱いて桐島を求めて走り出す。


 8月11日の公開初日、筆者が観た横浜にあるシネコンの客の入りは多く見積もって6割程度。翌々週には上映回数を減らして、そのままフェードアウトして終了するのか…という雰囲気だった。ところが上映が終わろうとしていた辺りから口コミで評価が高まり、公開から4ヵ月が過ぎた現在も二番館とロードショウ館、ミニシアターのどこかで上映が続く珍しい現象が起きている。キネマ旬報で大高宏雄氏は、早々に動員数だけで見切りをつけるシネコンの上映システムに苦言を呈していたが、確かに噂を聞きつけた人々が翌々週には1日1回のみとなったプログラムに泣く泣く諦めざるを得なかった…という現象は本作に限らず経験した事はあるのではなかろうか。
 では一体何が多くの観客を惹きつけるのだろうか?タイトルとなっている桐島は男子バレー部のキャプテンで成績も優秀、しかも付き合う彼女は学校イチの美少女…と、誰もが認める学校のカリスマ(スター)生徒だ。そんな彼が突然バレー部を退部したという噂が飛び交い、親友や彼女は事態が飲み込めず大混乱に陥る。金曜日に始まる物語は、最後まで桐島本人は姿を現さない。結局、周囲の人間たちは桐島と話しが出来ず映画は翌週の火曜日で幕を閉じる。じゃあ、何が描かれているのか?というと何のことはない…桐島に依存していた同級生たちの浮き足立って右往左往する姿だ。金曜日の放課後…何度もリフレインする映像。主要な登場人物たちを違う角度から捉えるリズミカルに進展する演出家でもある喜安浩平の緻密な計算の上に成り立った脚本と吉田大八監督の流麗な語り口に感心させられる。小説すばる新人賞に輝く朝井リョウ氏の原作は高校生たちの中に存在するヒエラルキーをリアルでピリピリしたセリフで描いている。劇中、頻繁に出てくる部活生徒と帰宅部生徒の構図。部活組の中でもスポーツ部と文化部の格差…文化部の中でも吹奏楽部より映研が下に見られ(映画好きにはツライ現実だが…それは当たっている)こういうのを最近はスクールカーストと呼ぶそうだが、それは今に始まった事ではない。昔からクラスでイケているグループ、イケていないグループが存在しており、劇中で交わされる会話は今どきの言葉になってはいるものの、やっている事は30年前だろうが40年前だろうが何ら変わってはいないのだ。ナルホド…そこに幅広い年代が反応したという事か。
 神木隆之介が演じるヲタクな映研部長の前田は、顧問から禁じられているゾンビ映画の撮影を無断で強行する大胆さを持ちながら度胸は無し。撮影のため場所を空けてと女生徒に頼む事すら躊躇するイケてなさが実に上手い。でも、女子からダサいと言われようが映画にかける情熱は決してイケてる男子に引けを取らない…という描き方が気持ち良い。スポーツ万能で女子からも人気があるのにイマイチ熱中するものが見つけられない東出昌大演じる宏樹が映研部員の姿に涙するラスト近く。普段は異なるグループに属する二人の生き方が一瞬、交差するシーンに身が震えた。そして、もう一人…周囲を掻き乱す意地悪な女子・沙奈に扮した松岡茉優が出色の素晴らしい演技を披露する。イケてない男子を小馬鹿にして自分の彼氏に想いを寄せる女の子の前でキスをせがむ見事なビッチ予備軍ぶり。どのクラスにもいたよな…こんなヤツという大いなる共感を一人受け止めていただけでも大したものだ。
 たかが一人の同級生が部活を辞めるという出来事が彼らにとって一大事であるという事。大人の真似事をする高校生たちのキラキラ光る瑞々しい姿に被さる高橋優が歌う主題歌「陽はまた昇る」の力強く熱いメッセージが胸を打つ。

宏樹に将来は映画監督ですか?と聞かれた前田が「映画監督は無理」と答えた後でこう続ける。「時々ね、オレたちの好きな映画と、今自分たちが作ってる映画がつながってるんだな…って思う事があって。」

【吉田大八 監督作】
フィルモグラフィー

平成19年(2007)
腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

平成21年(2009)
クヒオ大佐

平成22年(2010)
パーマネント野ばら

平成24年(2012)
桐島、部活やめるってよ



日本映画劇場とは看板絵ギャラリーお近づきに…

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