すーちゃん まいちゃん さわ子さん
いくつもの選択と向き合う瞬間。その先にきっと笑顔がある。まだ見ぬ明日の私たちへ贈る物語。

2012年 カラー ビスタサイズ 106min スールキートス配給
監督 御法川修 脚本 田中幸子 原作 益田ミリ 撮影 小林元 音楽 河野伸
主題歌 カサリンチュ 劇中歌 矢野顕子 照明 堀直之 美術 黒瀧きみえ 録音 浦田和治
編集 李英美 エグゼクティブプロデューサー 小西真人、武田吉孝、八尾香澄
出演 柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶ、木野花、銀粉蝶、風見章子、佐藤めぐみ、上間美緒
吉倉あおい、高部あい、井浦新、染谷将太

2013年3月2日(土)全国ロードショー!
(C)2012 映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』製作委員会


 素朴な画とシンプルながら核心をついたリアルなセリフが現代に生きる女性たちの心を掴み、じわじわと共感がひろがって待望の映画化が実現した益田ミリの四コマ漫画『すーちゃん』シリーズ(幻冬舎・刊)。介護や仕事、恋愛などそれぞれに事情を抱え、淡々と過ぎゆく日常にふと不安をよぎらせながら、それでも小さな幸せを見つける女性3人組を描く。監督はドキュメンタリー『SOUL RED 松田優作』や徳島の女性たちが葉っぱをビジネスに昇華させた実話を基にした劇映画『人生、いろどり』の御法川修。主演には、日本映画界を牽引する女優たち『食堂かたつむり』の柴咲コウ、『源氏物語 千年の恋』の真木よう子、『キャタピラー』の寺島しのぶが自然体で親近感のわく3人組を演じる。さらに実力派の若手俳優『ヒミズ』の染谷将太、『かぞくのくに』の井浦新や木野花、銀粉蝶、風見章子など名俳優たちが集結。主題歌には、奄美大島在住で人気急上昇中のカサリンチュ「あるがままに」、劇中歌には、矢野顕子自ら本作のために新たにレコーディングし、蘇った名曲「PRAYER」、それぞれの楽曲が映画のクライマックスを彩る。


※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
 すーちゃん(柴咲コウ)、まいちゃん(真木よう子)、さわ子さん(寺島しのぶ)は、かつてのバイト仲間。それから十数年、今でも友情は続いている。料理好きでカフェ勤務歴十数年のすーちゃんの最近の関心事は、もっぱら職場の中田マネージャー(井浦新)。 OA機器メーカー勤務のまいちゃんは、現在不毛な恋愛中。そして、WEBデザイナーとして働くさわ子さんは、母と二人で祖母の介護の日々。仕事、年齢、貯金、結婚、妊娠、介護…それぞれの道を歩いてきた彼女たちの悩みはつきない。ふと、立ち止まり、よぎる不安。《あたしが選んできたことは、ぜんぶ間違っていたの?》それでも彼女たちは"ちょこっと"の幸せを見つけて、今を生きていく。


 劇中に出てくる東京タワーが一望出来る億ションよりもお気に入りのスパイスや調味料に囲まれた柴咲コウ扮す、すーちゃんの古いワンルームアパートの方が数十倍も魅力的に思える。多分、この映画が好きな人は同じ思いで観ていたに違いない…ホント、人間の価値観って千差万別だ。『マザーウォーター』や『東京オアシス』を送るスールキートスらしい女性映画だが本作が今までと違うのは監督が男性であるという事。だからだろうか、どことなく視線が一歩引いた感じがする。今回に関して言えば、逆にそれが良かったかも知れない。益田ミリの4コマ漫画の原作が持つユーモアを表現する場合、敢えて異性が監督する事で肩の力が抜けた(入り込んで切実になり過ぎない)程良いトーンになる…というお手本だ。御法川修監督は、冒頭で立場の異なる三人の主人公が抱える悩みを「あるある風」に紹介して観客の共感を得る。これが上手い。すーちゃんが主役の原作を三人のドラマにした田中幸子の脚色は本当にお見事。この構成は最後まで一貫されており、三人が集まって近況を話す場面以外では、それぞれの悩みに立ち入るような事はしない。三十路を過ぎた大人の女性三人と言えば、今はなき“ぐーたんぬーぼ”特有の構図。あくまでも彼女たちは自分の力で何とか解決して生きて行く…という他人に依存しない姿に好感が持てる。
 大手電器メーカーで働くキャリアウーマンの真木よう子扮す、まいちゃんがセクハラ常習のお得意先に不良品のお詫びに赴き深々と頭を下げるついでのストレッチ…は思わず爆笑。笑顔を保ちながら心で「死んでくれないかな」と呟く。寺島しのぶ扮す、さわ子さんは寝たきりの祖母を母と二人で介護する。そんな彼女も心で「私が結婚したらお母さん独りでお祖母ちゃんを診るのかな」と呟く。三十歳を過ぎた三人が抱く将来の不安…ものすごく幸せというわけではないけど、不幸じゃないからという劇中に出てくるセリフにドキッとする。新しい出逢いよりも営業成績とリストラが気になる時代になっちゃった現実を嘆いても仕方ない。けど、何をもって幸せと判断するかは他人ではなく自分なんだと気づかされる。いつか三人で…と約束していたヘリコプタークルーズをすーちゃん一人で空から東京を見る場面で彼女の力強さに満ちており思わずホロリ…。バックに流れる矢野顕子の名曲が素晴らしい化学反応を生み出している。音楽もだが、この手の映画で大切なのは女の子が「いいなぁ」と思える部屋だったり職場のデザイン。その点、美術を手掛けた黒瀧きみえの室内装飾は、ちょっとした工夫で真似出来そうなセンス(これが難しいのだが…)に溢れており合格点を差し上げたい。
 どうしても気になったのは、店長になったすーちゃんが仕事中であるにも関わらず店のテラスで携帯に出ちゃうところ。それまで見せていた彼女のプロ意識に“あれれっ?”と、水を差された感じがして残念。接客業の場合、まず仕事中は携帯を切っておこう。

「最近、思い出が雑になってきたなぁ」原作にも登場するさわ子さんのセリフ。アルバムに整理されなくなった写真が増えたら注意信号か…。

【御法川 修 監督作】
フィルモグラフィー

平成14年(2002)
忘れてはイケナイ物語り オキナワ

平成16年(2004)
世界はときどき美しい

平成19年(2007)
世界はときどき美しい

平成21年(2009)
SOUL RED 松田優作
色彩の記憶

平成24年(2012)
人生、いろどり

平成25年(2013)
すーちゃん まいちゃん さわ子さん



日本映画劇場とは看板絵ギャラリーお近づきに…

Produced by funano mameo , Illusted by yamaguchi ai
copylight:(c)2006nihoneiga-gekijou