ホットロード
こんなに誰かを好きになったのは、初めてだった

2014年 カラー シネマスコープ 119min 松竹配給
エグゼクティブプロデューサー 秋元一孝、奥田誠治 監督 三木孝浩 脚本 吉田智子 原作 紡木たく
主題歌 尾崎豊 撮影 山田康介 美術 花谷秀文 音楽 mio-sotido 録音 鈴木肇 照明 渡部嘉
出演 能年玲奈、登坂広臣、木村佳乃、小澤征悦、鈴木亮平、太田莉菜、竹富聖花、落合モトキ
山田裕貴、鷲尾真知子、野間口徹、利重剛、松田美由紀

2014年8月16日(土)より、全国ロードショー
(C)2014「ホットロード」製作委員会  (C)紡木たく/集英社


 1986年から翌年まで別冊マーガレットで連載され、全4巻で700万部という驚異的な発行部数を誇る、紡木たくの「ホットロード」。十代の頃に出会って以来、何度も手に取ってバイブルにしている世代はもちろん、主人公に共感する若者たちによって時代を超えて読み継がれている不朽のコミックが、ついに映画化された。母親に愛されていないのではないかという寂しさを抱えて生きる主人公の和希を演じるのは、今最も注目を集める若手女優、能年玲奈。彼女だけが持つ透明感を生かし、ヒロイン、和希を演じ切っている。和希が惹かれていく不良少年、春山役に抜擢されたのは、本作が映画初出演となる三代目J Soul Brothersのボーカル、登坂広臣。原作者の紡木たくが今回映画化を承諾したのは、原作の和希に伝えたいメッセージがあったためで、それが映画化のきっかけであったが、能年と登坂はそれを可能にした存在。紡木はどちらが欠けても実現はなかったほど、ふたりが揃うのを待った。監督は『ソラニン』『僕等がいた(前篇・後篇)』『陽だまりの彼女』などのヒット作を手がけ、恋愛青春映画の名手として高い評価を得ている三木孝浩監督。原作と同様、世代を超えて愛される尾崎豊の名曲「OH MY LITTLE GIRL」が、原作の世界観を彩っている。ふたりの純愛だけでなく、母と娘の愛をみつめた、命の再生の物語。


※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
 亡き父の写真が1枚もない家で母(木村佳乃)と暮らす14歳の少女・宮市和希(能年玲奈)は、自分は望まれて生まれた子ではないと思っていた。母は結婚前から別の男性に思いを寄せており、和希が母の誕生日に万引きを働き警察に捕まるが、母は迎えに来ず、和希は孤独感を募らせる。ある日、転校生の絵里(竹富聖花)に誘われるまま、夜の湘南で出会ったのは、暴走族Nightsのメンバーである春山洋志(登坂広臣)だった。はじめは衝突し傷つけあっていたが、いつしか和希は安らぎや戸惑いを覚えながらも春山に惹かれていく。春山もまた和希の純粋さに心を開いていくが、そんな中、仲間たちから慕われていた春山はNightsのリーダーとなり、敵対するチーム・漠統との抗争に巻き込まれてしまう。


 公開から1ヶ月が経とうという恋愛青春映画だが、今だに客席の8割を埋め尽くす女子中高生の場内に一瞬たじろぐ(『僕等がいた』でも同じ現象が起きていた。三木孝浩監督の作品ってクチコミでのロングランが多いようだ)。例によって評論家の諸先生方と観客の温度差に今さら驚く事は無いが、それにしてもイイ歳をした筆者がカタルシスを感じる事はないであろう…しかも原作は「別冊マーガレット」掲載の少女漫画だものと、タカを括って横浜のシネコン(せっかくなので地元の映画館にしてみた)に出向いたのだが…。ところが、三木孝浩監督の描く湘南を舞台とした若い男女が慎ましく愛を育む姿は80年代という時代に同世代として生きた筆者にドンピシャ突き刺さったのである。暴走族が孤独な少女を救う白馬の騎士…という設定は今の時代にはどうなのか?むしろ、観客の大多数を占める若い女の子たち(多分、登坂広臣目当てだと思うのだが)には、主人公たちの心情は、どう映ったのかが気になるところだったが反応は良かったんじゃないかな?いつの時代も強い男への憧れは普遍であるようだ。
 舞台となる湘南(主に稲村ヶ崎から江ノ島、辻堂の浜須賀に至るまで)134号線から見える相模湾の風景を水彩画のような淡いタッチで捉える山田康介カメラマンの映像が素晴らしい。三木監督とは『僕等がいた(前・後篇)』に続く二作目だが、前作のトーンとは全く異なるブルーを基調としたイメージと主人公二人のアップと遠景をインサートするカット割りは80年代の角川青春映画を観ているようで懐かしかった。(バイクから見た映像なんか『スローなブギにしてくれ』を彷彿とさせるあたりからも、ひょっとして確信犯?)そして80年代に青春時代を過ごした筆者は、最後に流れる尾崎豊の「OH MY LITTLE GIRL」で完全に持って行かれてしまった。
 それにしても、能年玲奈である。頑なに実写映画化を拒絶してきた紡木たくが、「主人公・和希を演じるのが能年玲奈ならば…」と許諾した理由も本作における彼女の持つ他人を簡単に受け入れない特異な少女性を見れば納得出来る。結婚前から思いを馳せていた別の男性と不倫関係を続ける浮き足立った母親を前に、自分は望まれて生まれた子ではないのでは…?と思いながらも主人公の少女は絶望する素振りすら見せない。一見、人懐っこそうな顔立ちながら、時折見せる冷めた表情の奥底に潜む苛立ちを表す眼差しにハッとさせられる…上手い!転校してきた美少女に対して子供を堕した事があるという噂話をした同級生に向けた嫌悪感に満ちた表情は正に鳥肌もの。逆に言えば、口数が少ない役だと思わず表情や目で過剰な演技をがちだが、彼女にはそれが無い…だからスゴイ。印象に残るシーンがある。死んだ父との想い出と思っていた遊園地の記憶が、母との不倫相手だったと分かった時に見せる能年の表情だ。ここで初めて見せる絶望にうちひしがれた表情はベテラン女優ですらそうそう出せるもんじゃない。
 “あまちゃん”で国民的スターとなった能年玲奈にとって、ここ数年が女優としての真価が問われるところであろう。本作の前に『動物の狩り方』というショートフィルムを観た。父親に殺されかけた過去がトラウマとなった少女が、山奥で時給自足をする男と知り合い自らも動物を狩るようになる不思議な役を淡々と演じていた。両方の作品を観て思ったのは彼女は影のある役が上手いということ。ご当地アイドルのドラマでスターとなった能年玲奈だが、どうやらアイドル性のある女優というより、予測のつかない二コール・キッドマンのような影のあるキャラを演じられる女優になりそうな予感がする…とは言い過ぎだろうか?

「なんかイイなそれ…。バーカとか、そういうの言えるの」物語に直接関係ないが、孤立していた転校生の少女が言うセリフ。

【三木孝浩監督作品】

平成22年(2010)
Happy! School Days!
ソラニン

平成23年(2011)
管制塔
僕等がいた(前篇)
僕等がいた(後篇)

平成25年(2013)
陽だまりの彼女

平成26年(2014)
ホットロード
アオハライド



日本映画劇場とは看板絵ギャラリーお近づきに…

Produced by funano mameo , Illusted by yamaguchi ai
copylight:(c)2006nihoneiga-gekijou