音楽と映画のコラボレーション作品を集めた映画祭"MOOSIC LAB 2012"に出品されるや観客からの圧倒的な支持を得て見事、観客賞に輝いた『アイドル・イズ・デッド』。新生アイドル研究会・BiSという名のアイドルグループを主人公にしたブラックユーモア溢れるアイドル映画の怪作だ。先輩アイドルを殺したり、殺したはずの先輩が鉄男のごとき怪人となって復活したり…という内容に、今どきのアイドルって、こんな事までやるの?と目を疑うシーンが続出する。正統派アイドル映画の真逆に位置する、まるで同人誌的なノリに唖然としつつも心のどこかで、"やられた!"と叫んでいた。そして今回、万を時して製作された正当な続編となる『アイドル・イズ・デッド ノンちゃんのプロパガンダ大戦争』では、過激さは更にエスカレートしながらもラストではキッチリ感動させてくれるという離れ技を披露する。完成披露試写会の興奮も冷めやらぬクリスマス当日、その仕掛け人である加藤行宏監督にお話を伺うことが出来た。

 前作『アイドル・イズ・デッド』を手掛けるまでアイドルの事は全く分からなかったという加藤監督。インディーズのアーティストをメインにした映画を作ろうと考えていたプロデューサーの直井卓俊氏から「アイドルが主演の音楽映画を作ってみないか?」という話しを持ちかけられた事が意外だったと当時を振り返る。「当然、BiSの事も知らなくて、そこから彼女たちのアルバムやPVを見たのですが、これが結構面白かったんですよね」と言う加藤監督は早速、彼女たちのインタビューを基に脚本作りを開始する。「プー・ルイも最初はソロのミュージシャンだったのが全然売れなくて、これからどうする?ってなった時にアイドルに転身したわけですよね。一方、ノンちゃんは引きこもりだったのをアイドルをキッカケに外に出ようと考えた…要するに二人とも人生のリベンジをかけてBiSを結成したわけです。人生を変えたいというモチベーションでアイドルが誕生したいきさつは実に映画的でした」そこで加藤監督はスポ根的なアイドル映画という設定で、後は妄想を膨らませてプロットを書き上げていく。

 ちなみに彼女たちの姿…どこか加藤監督が以前に作られた『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』で山田真歩が演じた小劇団の舞台女優が周囲の人たちを巻き込んで我が道を進む…という主人公に共通したバイタリティーを感じるのだが…。「そうですね。自分の夢を叶えるために人の迷惑を顧みずというのは似てますね。実は、それってモデルは自分なんです。映画作りも一緒で、今までスタッフやキャストで参加してもらった友だちをいっぱい無くしていますしね。正に僕自身が人の善意を骨の髄まで吸い尽くして映画を作っているワケですから(笑)」BiSが抱いている"勝ちに行きたい!"というハングリー精神に自身の気持ちを投影したと語る加藤監督。「やはり、映画祭に出品する時も他の監督を出し抜きたいっていう気持ちが常にある…だから彼女たちの思いとシンクロしたのもあります」

 ダンスの振り付けからイベントのブッキングなど全て自給自足で行ってきただけに、彼女たちは現場での過激な要望も全てキッチリこなしたという。「これ出来る?と、尋ねた時に彼女たちの返事…"だいじょぶです!"というのが耳に残っています」と笑う加藤監督だが、これ出来る?の内容が、全身に血を浴びようが、ゲロまみれの床をのたうちまわるものだろうが、全て"だいじょぶです!"の一言でこなしていた彼女たちの根性には感服せざるを得ない。そんな彼女たちに加藤監督が要望したのは「小手先で芝居をするな」という事。「観客に演じている役の心情がハッキリ伝わる事が大事なので、技術ではなく気持ちで芝居して欲しい…とだけ言いました」

 今回の現場で加藤監督が常に意識したのは、周りのスタッフが意見を出しやすい環境作り。「自分一人で考えてもそれは100にしかならないけど、集団作業においては相乗効果によって100が200にも300になる。監督の役目は、その奇跡を起こす土台を作る事なんですよね」その奇跡が起こったのは正に本作のクライマックスであるBiSのライブシーン。350人のエキストラが参加したライブシーンはリハーサルも無く、一発でOKだったという。半分は研究員と呼ばれるBiSのファンでライブ会場でのオタ芸には慣れているとはいうものの「いや、研究員によると、円形状態になるやることはないらしいんです。普段はステージに向かってやるものだから、円形になるのは彼らにとっても初めての事なんです。それだけに彼らが自然に動き出して円を作り、BiSを中心に渦を巻いていったのは見事でした。普段エキストラの指示をする助監督も俺たちの仕事が無いって言ってたほどでしたから」

 加藤監督においては初の長編となった『アイドル・イズ・デッド ノンちゃんのプロパガンダ大戦争』。「アイドルを知らなくても誰もが楽しんでもらえる映画を作ったつもりです」という言葉通り、本作を観てBiSのファンになったという方も多いと耳にする(事実、筆者も彼女たちの活動に興味が湧いた)。既に次回作の構想も練り始めているという加藤監督。「映画は仕事として考えず、楽しみながら作りたい」と最後に述べてくれた言葉通り、現場の楽しさが観客に伝わって来る次回作が今から楽しみだ。

取材:平成25年12月25日(水) テアトル新宿会議室にて


加藤 行宏/Kato Yukihiro 1981年、東京都生まれ。
中央大学文学部仏文学科在学中に演劇活動を行い、卒業後にニューシネマワークショップで映画制作を学び、映画をつくり始める。NCW制作部でつくった長編『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』が、第4回田辺・弁慶映画祭で特別審査委員賞等を受賞、2011年に劇場公開される。“MOOSICLAB2012”の企画で制作した『アイドル・イズ・デッド』が同映画祭の観客賞ほか数々の賞を受賞。他の主な作品に『痩せる薬』、『機械人間、11号。』、『善人』、『ラジオデイズ』がある。

レーベル:キングレコード(株)
販売元: キングレコード(株)
メーカー品番: ・ KIBF-1223 ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 3,990円 (税込)

『アイドル・イズ・デッド』(PART1)1月8日より ブルーレイ、DVD発売

【加藤行宏監督作品】

平成18年(2006)
痩せる薬

平成19年(2007)
Movies-High6
 NCWセレクション

平成20年(2008)
機械人間、11号

平成21年(2010)
人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女

平成23年(2011)
善人

平成24年(2012)
アイドル・イズ・デッド

平成25年(2013)
バナナvsピーチまつり 「ラジオデイズ」

平成26年(2014)
アイドル・イズ・デッド
 ノンちゃんのプロパガンダ大戦争



日本映画劇場とは看板絵ギャラリーお問い合わせ

Produced by funano mameo , Illusted by yamaguchi ai
copylight:(c)2006nihoneiga-gekijou