昨年の“ショートショート フィルム フェスティバル & アジア 2013 ”より総合エンタメアプリUULA[ウーラ]とShortShortsがミュージックShort部門に若手クリエイターの育成を目的として新設したUULAアワード。栄えある第一回目の受賞者となったのはMAY'Sの“SKY”をモチーフとした『ハヌル -SKY-』を手掛けた門馬直人監督だ。ヤクザの下っ端だった若者が組織を裏切って、風俗嬢として働かされている韓国人女性を逃がすまでの道のりを描く優れた恋愛ドラマである。そして今年、門馬監督は浜崎あゆみの名曲“LOVE 〜Destiny〜”を使った『君を想う』で、不治の病に侵された女性が“新婚ごっこ”という形で愛する男性と最後のひと時を過ごす健気な姿を瑞々しく描き、再び観客の涙を誘った。

 前年に引き続き運命によって引き裂かれてしまう男女の最後の瞬間を切り取る門馬監督は、基本構造として両作は同じ作り方をしていると述べる。「例えば『ハヌル -SKY-』は空港までの二人の行程を軸にして回想シーンを挿入していますし、『君を想う』も食卓で“新婚ごっこ”をする二人の姿を軸にしています。両方に共通しているのは、どちらもラストシーンなんです」短い時間で物語を構築するショートフィルムにおいて大切なのは、本来あるはずの長い物語の中から一番見せたいところを抜き取る事で、観客は最短距離でカタルシスを感じられる。突き詰めると長い二人の物語から10〜15分を抜き出すとしたら、一番の見せ場はエンディングではないのか?という結論に達したという。

 同時に門馬監督は「全体の時間が短いからワンシーンの長さが目立ってしまう」と、ショートフィルム作りの難しさを語る。「毎回、脚本を作る時は分かりやすく話しが届くように、これで分かるよね…というところまでストーリーを削っていく作業を脚本家の一雫ライオン氏と何度も繰り返しました。ギリギリを探って小さくなった物語に、今度はキャラクター像を肉付けする作業をしていきます」こうした一連の作業は、今年のアワードセレモニーで「短編小説は削りの美学」という名言を残した湊かなえさんの言葉に共通するものを感じた。「きっとショートフィルムを作るのも短編小説を書くのも同じ作業なんですよ。削ぎ落としちゃってダイエットし過ぎた分、筋肉をどう付けるか…これが難しい(笑)」門馬監督のショートフィルムを観終わっていつも感じるのは、まるで長編を一本観たような充実感だったが、その理由が今回の取材でよく理解出来た。ひとつの物語の中で一番イイところを抜き出して描いているから、その前後を描いていなくても登場人物たちの人生を端々に見ることが出来き、我々観客の想像の中で映画は勝手に膨らんでいくのだ。『君を想う』では二人がどんな人生を歩んできたとか、彼女が病気になるまでの経緯は一切語られておらず、回想も当日の朝…病院のベッドから始まっている。でもそれで充分観客に二人の関係は伝わってくるのである。話は変わるがグラビアアイドルの佐藤寛子さんが脚本を手掛けた『柩』も多くを語らず、その分を心象風景として主人公の内面を描いたり、何気ない家庭や職場での会話から登場人物たちの人生が垣間見えたり…と優れた作品だった。

 門馬監督が監督デビューしたのは2年前の39歳の年。殆どが二十代から三十代の新人クリエイターの中で、かなり遅いデビューではあるが「それなりにこの年齢じゃないと見えない事もあると思うんです」と語る。「これまでキャスティングやプロデュースをやってきたおかげで、俯瞰から見る事が出来るのが良かった」と、言いつつも監督としてはまだまだ駆け出し…だからこそやりたい事は山ほどあるという。これまでの思いを一気に放出するかのように、監督デビューして僅か2年で4本(!)というハイペースでショートフィルムを発表し、更には、この春クランクアップしたばかりの長編デビュー作『ホテルコパン』(市原隼人主演)の公開を秋に控えているなど精力的に活動している。そんな門馬監督にとってショートフィルムとは…?という質問をぶつけてみた。「自分の思いとかメッセージをコンパクトに詰め込んで伝えられるのがショートフィルムの良さですよね」既に次回の企画も考えているという門馬監督は、この数年で劇的に進化した通信環境のおかげで、ショートフィルムはもっと伸びるコンテンツになるだろうと分析する。「移動中の電車で携帯動画を見るのに丁度イイ長さが15分前後だと思う」CMを見なくなった若者に対して、どのように企業メッセージを伝えていくか…を考えた場合、携帯で手軽に見れるショートフィルムにその鍵が秘められているのだ。既に海外では企業とショートフィルムの関係は構築されているが、いよいよ日本にもその波がやって来ているようだ。

 今まで発表してきた4作品の完成度の高さに驚かされるが「監督は楽団で言えばコンダクター(指揮者)のようなもの。各スタッフの得意とするところを引き出すのが僕の役目です」と至って控えめ。この言葉は、以前リクルートでグラフィックとWEBデザインのディレクターをされて来たという経歴を持つ門馬監督らしい発言でもある。「だから現場では基本スタッフに全て任せているんです。よほどイメージと違う場合は言いますが…」そこはスタッフに対する信頼感があってこそ。そのスタッフについても門馬監督が「スゴイ!」と見込んだ人物に声を掛けている。その最たる例が初監督作品『ミネストローネ』から3作品組んでいる撮影の今村圭祐カメラマンだったりする。「彼の作品を観た時に何とかして会いたいと…プロデューサーに探してもらったんです(笑)」それから2年の間に撮影した3作品のショートフィルムで今村カメラマンとはコンビを組んでいる。「現場で自分が思ってもみないアイデアが彼から出てくるのが面白い。そこで初めて僕の能力を超えた作品が生まれるんです」想像通りのものしか上がって来ないなら皆で作る意味がない…という門馬監督は要望だけ伝えると後は全幅の信頼感の下にお任せするというスタンスを貫く。

 「映画は自己実現行為」という門馬監督は、映画祭で賞をもらった事が今後の活動において大きな意味があったと振り返る。例えば街頭で何かを言ったところで誰も耳を貸してくれなくても映画を通すことで少なくとも観てくれた人には届く。そして、もっと多くの人の耳に届けるためにも映画祭のような場所が重要だという。「ショートフィルムは若手監督の登竜門…と言われていますが、何の経験もない監督に企業はお金を出してくれませんよね?いくら自分がやりたい事があっても実績が無いと出来る事が限られてしまう。『ホテルコパン』も『ハヌル -SKY-』で賞をいただいたから実現出来たわけです。映画祭は企業側が人を採用する判断をする場になっているので、若手クリエイターは積極的に作品を出し続けるべきですよ」ここ数年、グランプリは海外の作品が選ばれ、日本人監督として悔しい思いをしていると語る門馬監督。長編映画を到達点とするのではなく、既に次なるショートフィルムの企画も構想中という。プロデューサーもやってきたからこそグローバルな視点での発想も出来る門馬監督ならではの新作が楽しみだ。

取材:平成26年6月26日(木) 赤坂某所にて


門馬 直人/Noto Monma 1973年1月23日、埼玉県生まれ。
株式会社リクルートにてグラフィックおよびWEBの広告ディレクターとしてダイエー、積水ハウス、サイバーエージェント、スミスアンドネフューなど十数社を担当。その後、映画製作会社ドッグシュガーの立ち上げに参加。以降、映画・TVドラマのプロデューサー・キャスティングプロデューサーとして活動を続ける一方、CM・PVなどを監督する。1日で1万8000viewsを突破した自主制作アニメ「DOGMAN 2ND FIDHT(全13話)」では、監督・脚本・作画・アニメーション・編集・音響効果までを一人で制作。初監督した短編映画『ミネストローネ』(2012年)が、“ショートショート フィルム フェスティバル & アジア 2013”JAPAN部門に正式エントリー、2作品目の『ハヌル -SKY-』(2013年)は、同映画祭ミュージックShort 部門でUULAミュージックアワードを受賞。3作品目となる『柩』が2013年10月に公開。続く“ショートショート フィルム フェスティバル & アジア 2014”ミュージックShort 部門で『君を想う』を特別上映し、現在UULAにて独占配信中。また長編映画『ホテルコパン』も今秋公開予定。
【門馬直人監督作品】

平成24年(2012)
ミネストローネ

平成25年(2013
SKY ハヌル

平成26年(2014)
君を想う



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